第48話 団欒

048 団欒


卒業後の練習航海を終えて晴れて少尉に任官される。

任官されるまでは、普通の兵よりも位が下でこき使われる。

そのような期間を1年続けようやく少尉に任官するのである。


1910年韓国は併合される。

嘗て、親韓国であった伊藤は様変わりし、韓国が敵対国であるかのような厳しい姿勢で、政治に対するようになった。


インフラ整備などの投資が決定的に欠けていた朝鮮半島。

だが、この措置は、朝鮮人の反感を強くする、日本国民との間に大きな隔たりがあったからである。(そもそも、大韓皇帝の頃から何も変わっていないだけだが・・・)


この影響で、もっと後におこるはずだった3・1独立運動を発生させることになった。


だが、その過激な独立運動は、軍の弾圧を強化することになる。

そして、独立運動を支援するロシアの影が暗躍していた。


結局、日露戦争の原因がここでも再発する形になり、朝鮮人レジスタンスと帝国軍の兵士の熾烈な戦いが繰り広げられることになっていくのである。


・・・・・・

少尉任官後、休暇をもらい仙台に舞い戻る。

生まれたばかりだった弟の玉兎は、すでに15歳程度に見えた。

もはや立派な外国人青年であった。

風貌は、ニコラ・テスラにそっくりだった。

だが、まだ数え6歳のはずだったのだが・・・。


彼もまた、成長促進剤が利きすぎる病気なのだろうか。

さらに、彼は本当の天才だった。

今すぐにでも、海軍兵学校に入学できるほどの学力を有し、外国語も数か国語を習わずとも話せたのである。(きっと前世の記憶をもっているに違いない)


「私は兄さんのようにお国のために軍人なるか、ニコラのように学者になるか迷っております」なんとも不思議な感慨が心に浮かぶ。癒される~。


「学者がよいでしょう、私の考える兵器を実現してほしいものです」

そういって、頭をなでた。

「どのようなものを考えているのでしょうか」

万年筆とノートをもって、希望を聞いてくれる。

「とにかく、通信機と電探です」

「次は磁器探知機」

「さらには、VT信管」

「もっと言えば、ホーミングミサイル」

なんでも言えというので、言ってみた。

「なるほど、そのコンピュータを作り、小型化する必要があるわけですね」


まさか、6歳児から事情聴取を受けるとは思ってもみなかった。

「通信機器、磁器探知程度ならば、研究を進められるでしょう、兄さんの得意分野です」

どうも、ニコラを兄だと考えているようだが、そうではない。君が兄で、ニコラが弟なのだ。

そして、君が私の弟なので、弟の弟でニコラは末弟となる。そうしないと、うまく操縦できないので、そうして欲しい。


そうやって、ニコラに教えているのだから。


そして、父は、他所の叔父さん的な扱いらしい。

まあ、私も本当の父親であるなどとおもったことは無い。

これは、悪い意味で言っているのではなく、本当に血のつながりを感じないのだ。

母親とは、そう、少し感じるのだが、父には全く感じない。


悪くゆうと爺やのように思っているのだ。

だが、それも私のような『神の使徒』では致し方ない部分なのだろう。


神の代行であるため、人間的な感情が希薄なのかもしれない。


家では、教団関係の書類の山が待っていた。

色々と決裁の書類がたまっていた。


日月神教は、今や信徒100万の大教団(自称)に育っている。

東北一体は、気候的な問題で、不作との闘いの土地である。

この宗教は、物理的に、不作を排除できる利便性が存在する。

東北地方の農民のニーズにマッチした宗教なのだ。

そう、たとえ祈念料が収穫の10%であろうとも。


さらに、関連会社も確実大きく育っている。

会社経営的には、利益の一部を神に捧げて事業繁栄を祈っていることになっている。


仙台税務署との激しい戦いが起ころうとしていたのだが、天の声がその動きを凍結させた。

陸軍である。

すでに、かなり武器供給で食い込んでいる上に、乃木大将の嵩を着て膨れ上がるばかりである。それに、伊藤元老まで加担し始めたので、大蔵省は多大な圧力を感じたのであろう。


勿論、本当に査察などが始まれば、捜査員の一人や二人は、心労で自殺するほど忙しくなったことであろう。


税務署は知らないが、日月神教の教えには、背教者、不信神者は、天に代わり誅殺すること。

という教えが現実に存在していたのである。

彼らは、現実に戦闘訓練を受けたエキスパートで、実戦の経験も経ている。

『PMC八咫烏部隊』、又の名を『日月神教青年奉仕団』。

そして、いまもひそかに、東北いや東日本の各地から孤児たちが集められていることなど、人々は知るまい。


彼らは少年奉仕団の後に青年奉仕団へと入隊する。

もはや、誰の説得も受け付けることは無くなった最強の兵士として。


「父さん母さん、お久しぶりです」

「ああ、久しぶりですね」

「玄兎ちゃん」母さんは全く年を取らず相変わらずお綺麗だった。


「書類の決裁は代決で結構ですので、ドンドン回してください。それと豊凶判定の書類は地図と地名、区画を丁寧に塗ってください。それを私宛に送ってくれれば、祈ります」

「ああ、兄さん。それなら僕がやっておきます」ここで6歳(数え)の弟が言ったのである。

何と兄想いの弟だろう。癒される~。

「豊作のやり方は僕にもわかります」どうやら、彼も神の代理のようだ。

「さすがは、玉兎だね」

170センチの6歳の弟の頭を撫でる。

私は、185センチで成長を辞めた。願えばまだ十分行けただろうが、これ以上大きくなると不便の方が大きくなりすぎるだろうからだ。


「それにしても、バイク事業はあまり売れていないようですね」

「そうなんです」

「まあ、利益は無視して、もっとサスペンションを利かせたものに改良するようにお願いします」

「わかりました」

「それと、米国や独国では、自動車が生産されているのです。わが社のオートバイ部門に自動車の研究をさせてください。米国の大量生産方式を参考にするように、職人たちを研修に出してください」

「承知しました」


忙しい日々の中、久々に家族団らんであった。

?団欒?あったかな?




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