第29話 銃の神様と神々
029 銃の神様と神々
ベストタイミングだったのだろう。
ブローニング家も、売れると考えていた新型ショットガンがまさか売れないと考えていなかったようだ。
そして、なぜか、買い取るという人間が現れる。
これはチャンスだ。神よ、感謝を!
幸いにして、先の戦争でこちらも利益が相当でた。
資金は充分にある。
手元に1万ドルはもってきていた。
この当時1ドル2円という為替レートになっていた。
1万ドルは2万円。現在の価値だと、2000万円程度である。(一応1000倍のレートとしている)この金は、陸軍に軍靴を納めて得た利益の一部である。
「この一万ドルは手付金でお渡しします」
「しかし、知り合って間もない私にこれだけのお金を」
「私は、あなたが神の僕であることを知っています。決して嘘偽りを言わないことを知っているのです」
彼は、モルモン教徒である。本名は別にあるが、通称がモルモン教である。
清貧で誠実をモットーにしているのだ。だが、従来のキリスト教の教えとは相当違うため、迫害されており、この塩の大地に追いやられたのである。(人の住めなそうなソルトレイクなのだ)
彼は銃の神である。
この程度の端金で、信用を得ることができるなら、安いものである。
「私をそこまで信用していただけるというのならば、私も何らかの形でお返しするのが筋という物、ショットガンと今設計中の銃などの製造権をお売りしましょう。そして、機械工の指導のために、日本に行きましょう」流石は、モルモン教徒、誠実である。
「ありがとうございます。酒はお飲みにならないでしょうから、せめて山の幸、海の幸で歓待させていただきます」彼らは、酒を飲まない。
こうして、見せ金1万ドルは大きな力を発揮したのであった。
次の日、椎茸出汁のミソスープを作って食べさせる。
よく考えたら、刺身なんか生ものだから食わないだろうなと思ったので、みそ汁くらいは食うのか試してみたのである。
「これは大変美味しい」
椎茸出汁は、米国でも好評だった。
奥さんに、干し椎茸を土産でわたし、使い方を教える。
味噌は渡さなかった。見た目があれだからだ。
外国人には、きっと理解してもらえないと考えたからである。
春に来日するという約束を取りつけて、無事にサンフランシスにたどり着いた。
そこで、サンフランシスコの名物、ハンターズポイント造船所などを見学した。
ここは、海軍のサンフランシスコ基地になる造船所である。
なるほど、巨大な干ドックを備えた途方もない規模であった。
夜に勝手に侵入して見たので、案内はいなかった。
流石、米国の工業力である。そして、その広さよ!このような国と戦わねばならぬとは!
神は、我等を見捨てたか!
これだけ規模が大きいのだな。
日本とは、全く違う規模である。
甲子園や東京ドームが何個入ります、という規模感とは全く違うレベルである。
しかも、ここは、主力艦を建造する造船所ですらないのだ。
ほとんどの主力艦は、東海岸で製造されるのだが、複数の造船所や海軍工廠が存在する。
勝手に侵入して、勝手に考えて、勝手に途方に暮れる。
勝手に屋根に上り、夜空を見上げていたら、いつの間にか眠ってしまった。
壮大な星空は、美しかった。
サンフランシスコから横浜行の船に乗り日本へと帰っていく。
まあ、銃関係はこれで完結できるほどの成果は得られたのだ。
女神との約束では、日本大勝利となっているが、そんなことができるとも思わない。
そうしたいのなら、もっとすごい武器、例えば特殊爆弾(核爆弾)などを用意して持たせてくれないと無理に決まってる。
私は悪くないのだ。
そう、私は悪くない。
きっと女神は米国を見たことが無いのだ。
小さな日本で生まれ育った彼女には、大きな米国を感じることができなかった。
それゆえに、あんなに無邪気に勝てると信じている。
きっと馬〇なんだな!
その時、海上に雷が落ちた。
凄い轟音が、辺りを払う。
「そういえば、日本の領海に入ったようだな」
滅多なこと口走れば、命も危ういことに気づくことになる。
そういえば、『
本物の雷を武器にできれば、敵を薙ぎ払うことができるのだが。
その時、私の脳裏に、正に稲妻が走った。
そうか、そういうことなのか!
次のターゲットはあの人だな。
勝手に考える癖は私の特権だった。
・・・・・・・・
そして、船は無事に日本にたどり着く。
これで、旅の途中で難破して、私が死んだらさぞ面白いかもしれない。
何という顛末!
そういう訳にも勿論いかないのだが。
その春、ブローニング兄弟が来日し、わが自転車会社で技術指導を行ってくれた。
「これでは、駄目です!この工作機械を買いましょう」
「おお、これもダメです」
英語で次々と駄目だしをしてくれる。
通訳は、日月神教青年団がしてくれている。
彼らは、英語の勉強を必須で行ってくれている。
工作機械がやってくるまでは、次の指導もできないだろうと、彼らを日本の名所旧跡に案内する。
所謂、接待攻勢を仕掛ける。何としても、わが社との専属契約を勝ち取るために。
私はその頃、入学式を終えた中学校へと通っていた。
井上君は律儀にダイヘンをしてくれていたようだ。
しかし、入学式では、それは無理というものだ。
彼は基本、真面目と正義感の塊なのである。
こっそりと、米国土産のコルトリボルバー拳銃を押し付ける。
これも、ブローニング氏の発明を使用している。
何として、手に入れるぞ。
そう、何としてもだ。
「笑顔が真っ黒だけど、何か悪いことを考えているね」と井上君が問いただしてくる。
その通り、いうことを聞かねば、〇して生き返らせてもいうことを聞かせてやろう。
かの薬の薬効を確かめることもできて一石二鳥かもしれない。
かの薬の残数は、9である。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます