第13話
「皆さん、今日は来週にある宿泊について進めたいと思います」
うわー。
きたよ・・・
これがキュンキュンイベント・・・のはずが、私にとってはフラグである。
いやでも待てよ、ローズさん、今のところ悪さとか全然ないし、目があったらにこりと微笑んでくれるし。
男子生徒をメロメロにしてるのは変わらないけれど、それは、ローズさんの容姿とかが問題なわけで。
いい人なのかも。
普通に、宿泊行事だしね。楽しみたい。
どうせ貴族の集まりなんだから安全なところに行くはず・・・
「今年は森に行きます」
全然安全じゃなかった・・・
「班決めを行います。よく聞いて」
森・・・ね。
恐ろしい野獣がいるって聞いたし・・・
なんでこう、もっと、安全で平和な行事はないんですかね?
「・・・ウィーク殿下、ドミノさん、ローズさん、ティアラさん」
はい?
いきなり組まれた班に寒気を感じる。
殿下と私が同じになった理由なんて聞く間でもない。
なぜローズさんと一緒なの・・・
まあ、いいひとっぽいからいいんだけどさあ・・・
あと、成績トップだと噂されているドミノさん。
殿下は綺麗な金髪だけど、それとは違く、暗めの銀髪碧眼なわけで、明るいらしい。
話したことはないけれど。
「・・・以上です。班ごと話し合っておくように」
それ以降、長ったらしい行く意味を説明された。
「森で、ハイキング・・・」
なんてものやらせようとしてるんだおらぁ・・・!
げんなりしても仕方ない。
殿下、ローズさん、ドミノさん、私の一列で向かうらしい。
ドミノさんは、さっき少し話したけれど、明るくて話しやすかった。
「じゃあ出発するよ」
若干遠くから殿下の声が聞こえたかと思うと、私たちの班が出発。
なぜか最後なんだよね。
ザ・森。みたいな道を歩く。
途中でたくさん別れ道がある。
というか、令嬢にこんな森登らせていいの?
不思議に思いつつ登っていると、ドミノさんが振り返った。
「・・・忘れ物した・・・」
「えっ・・・どこでですか?」
すると、ドミノさんは顔を青白くして言う。
「・・・出発地点・・・」
嘘でしょう、とつっこみたくなる。
だがそう言ってはいけないのは承知なので私は聞いた。
「何を忘れたんでしょうか・・・?」
いやな予感は的中。
「・・・母さんの形見・・・」
私は唖然とする。
殿下とローズさんは構わず進んでるみたいだ。
まあ、一列で間を保って歩いてるんだから仕方ないけど。
「さっき、ローズに先行っててって行っといた。悪いけど、一緒に来てくれねえ?道覚えてない」
私は仕方ない人だなあと思い、まっすぐ来た道をたどった。
「お、あったあった」
そこには先生たちもおらず、ドミノさんのお母さん形見らしきものを運よく拾えた。
「悪いな。急いで戻ろう」
そう言って歩き出す。
私は途中で空を見上げた。
黒い雲が覆ってきている。
「雨降りそうですね・・・え?」
再び前を向いた時にはドミノさんの姿はどこにもなく。
・・・あれ?
走って行ったとか?
代わりに、ぽつりぽつりと雨が降り出す。
ああ、これは噂のイベント・・・でもよ、ふふっ。
私には折り畳み傘という見方がいるのだーっ!
なんだか上機嫌のままリュックを見る。
・・・ん?
カラビナで付けといた折り畳み傘がなぜか見当たらない。
・・・なんで?
どこかで落としたのかなあ。
いやでも、カラビナで付けといたし・・・
腑に落ちないままとりあえず歩いた。
雨は次第にたくさん降る。
困ったな、これ。
ドミノさんどこ行っちゃったんだろ・・・
自分が雨に濡れていることに気づいたころ、ふと崖の下を見た。
すると、見覚えのある傘を見つけた。
あれは、私の傘・・・やっぱ落としたのか。
さすがにどこかのヒーローみたいに崖をおりるわけにもいかないし、そのまま進む。
ほう、っと息を吐きだした。
白い息が出ては消える。
・・・シャワーした気分。
5分は歩いただろうか、ちょうどいい洞窟を見つけた。
イベントの材料だろうか。
ありがたく中に入ったが、服が濡れてるので寒さには変わりない。
・・・雨やむまで待たないといけないのかあ。
私はすとん、としゃがみこんで自分の足を抱くようにうっつぷせた。
ああ・・・傘もったいないなあ。
そう思いながらまどろむ。
つかれてんのかな、なんで眠いんだろう。
昨日楽しみすぎて眠れなかった?
いやいやない。
一生懸命気を確かにする。
今寝たら死ぬじゃん。
完璧死ぬじゃん?
なんとか目を開けようとも、閉じてしまうその瞬間・・・
「ティアラ嬢!」
ヒロインは溺愛から逃れたい!! にゃーう @o5i5
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