第9話

「な、なにこれ・・・」


屋敷は燃えていた。


ドラマや映画で見るように、燃えていた。


「ティアラ!遅い、ああ、なんてこった。すべてが燃えている・・・ノリアまで!」


お父さまの叫びに驚く。


「お母さまが?!」


私は反射的に家に向かった。


「ティアラ嬢!君は馬鹿か?!」


殿下に手首をつかまれて前に進めない。


「だ、だって、お母さまは・・・」


「君は死にたいのか?!」


殿下の強い言葉にそれでも、と私は続けた。


頬に涙がわたる。


「お母さんだけが・・・私の、味方だったから・・・」


今のお母さまじゃなくて、お母さん。


なつかしい顔が、もう見れなくなってしまうなんて。


そんなの、そんなの、やだよ・・・!


「家を壊せ!早く!燃え移る前に!」


誰かが叫んでいる。


木の棒を使って、私の目の前で家は壊されていく。


いつの間にか視界はぼやけすぎていて、熱さと悲しみに襲われる。


「・・・ううっ・・・」


嗚咽が漏れた。


なんでこんな思いれしているなんて、明確だ。


・・・お母さん。


前世の、優しくて、かっこよくてきれいなお母さん。


私は涙をこらえきれずに泣いた。


殿下は何も言わずに私を引き寄せて、そっと頭をなでてくれた。

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