第247話  大量のお弁当箱に気圧されちゃう、ぽっちゃり


 アリアちゃんとイリアちゃんにお弁当の作り方を教えたところ、二人は予想以上の成長速度でわたしのお店の商品メニューを学習していった。

 それからしばらく経ち、何だかんだずっと厨房に籠っていると、気づけば窓から見える外は暗くなり始めていた。

 日が傾いていることは思ったより時間が経っているみたいだ。


 そこでわたしは、いまだ厨房のキッチンで忙しなく動き回っているアリアちゃんとイリアちゃんに声をかける。


「ふぅ、それにしてもかなりの量のストックができたね……!」


 厨房のテーブルの上には、大量の小さな木箱が山積みになっていた。

 この木箱は、サラが《魔の大森林》の木材から作ってくれたもので、いわばわたしのお店で提供するお弁当のお弁当箱である。

 つまり、このテーブルに山積みされた木箱たちは、全て中にお弁当としてのご飯やおかずが詰め込まれたれっきとした商品たちなのだ。

 そして、この数百のお弁当をものの数時間で作り上げたのは――――


「コロネさん! 教えていただいた通り、たくさんのお弁当作りました!」 

「わ、私も何とか頑張ってお手伝いしました!」


 この二人、アリアちゃんとイリアちゃんだ!

 通常弁当はわたしが一回教えただけで完璧に再現しちゃうほどの料理スキルを持っていた。

 だからわたしもどうせならってことで他の商品の作り方も教えていったのだ。

 スタミナ弁当やのり弁とか、通常弁当以外にもいくつかお弁当のメニューは取り揃えていたからね。

 だけどそれらも全て調理工程を吸収されてしまい、もはや今となってはわたしに並ぶかそれ以上のレベルでお弁当を作れるようになってしまった。

 スゴいスゴいとは思っていたけど、よもやここまで凄まじいとは……!!


「そ、それにしても二人の料理スキルはとんでもないね……。こんなに大量にお弁当を量産できると思ってなかったから、途中でこんなに大きな炊飯器も用意したくらいだし」


 厨房の端に、数十人分くらいの量を賄えそうなくらい大きな寸胴のごとき炊飯釜が一つ鎮座していた。

 最初は店に置いてあった炊飯器を総動員してお弁当作りに励んでいたんだけど、それでも足りなくなってきて途中でわたしがラグリージュの市場で巨大な炊飯釜を調達してきたのだ。

 厨房に佇む巨大な炊飯釜は、二、三時間前にわたしが買ってきた新品ほやほやのもの。


「コロネさんがこんなにおっきな炊飯釜を用意してくれたおかげで、お弁当作りも捗りました!」

「と、途中からご飯の炊けるスピードが間に合わなくなってきていたので、あの炊飯釜には本当に助けられました……! これほどまでにお弁当を作ることができたのもあの巨大炊飯釜があったおかげです。ありがとうございます!」


 アリアちゃんとイリアちゃんが同時にお礼と共に頭を下げた。

 いやいや、お礼を言いたいのはこっちの方だよ!

 まさか雇用して初日でこれほどまでに活躍してくれるとは予想外だった。


「いや~、今日は二人とも本当にありがとね! 作ってくれたお弁当はアイテムボックスに回収しちゃうから」


 そう言って、わたしはアイテムボックスを発動させてテーブルの上に積まれたお弁当箱の数々を一気に収納していく。

 わたしの手のひらに出現したゾーンのような場所にみるみる内に吸い込まれていくお弁当箱たちを、アリアちゃんとイリアちゃんは興味深そうな顔で眺めていた。


 さて、思わぬところで大量にお弁当のストックが作れてしまったわけだけど……これから二人に何の仕事を任せようかな。

 わたしはアイテムボックスにどんどんお弁当箱を吸収しながら、とりとめもなく今後の計画について考えを巡らせるのだった。



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