第134話 ポテト作りを始めちゃう、ぽっちゃり
以前にベルオウンの市場で大人買いしておいたジャガイモと油、そして塩。
ざっと街を見回った感じ、少なくともベルオウンの中にはポテトとかポテチみたいなフードは見当たらなかった。
ジャガイモを売っていた店のおばちゃんにも軽く聞いてみたけど、この世界ではジャガイモを揚げることはあんまりないらしい。
ということは、そもそもポテトみたいな料理の概念はないのかもしれないね。
だけど、ポテトはわたしの大好物の一つだ。
それがずっと食べられないのは嫌なので、いつか自分でポテト作りでもしようと思って予め材料を買っておいたというわけだ。
そして今、そのポテト作りを行うにうってつけの状況にあることを思い出した。
「せっかく外で食事をとってるんだし、周りにあんまり気を遣わなくていいから油が散りそうなポテト作りにはピッタリだもんね!」
やる気になったわたしは、サラにお願いをした。
「それじゃあサラ、まずは大きめのテーブルを作ってここに出してくれる?」
「ぷるん!」
サラはわたしの要望を聞くと、ものの数秒で組み立てた木製の大きなテーブルを吐き出した。
「ありがとう! それじゃあ、まずは材料を出すか」
わたしはアイテムボックスを開き、中からボトボトとジャガイモをテーブルの上に落としていく。
十個、二十個、三十個とテーブルに広がっていくジャガイモの個数は多くなっていき、やがて百個くらい放出したところで一旦アイテムボックスを閉じた。
テーブルの上には全面にゴロゴロとジャガイモが転がっているけど、これでわたしの手持ちの二割くらいかな。
一回この分のジャガイモで料理を作ってみよう。
「えーと、まずはジャガイモを切らないとだね。うーん、どういう形のやつにしようかな」
一言にポテトと言っても、色々と形がある。
細長いポテトに、半円形のポテト、そしてハッシュドポテトなんていう物まであるからね。
「とりあえず今回は半円形のポテトを作ってみようかな。それじゃ試しに一つジャガイモを切ってみよう」
わたしは手元に転がっていたジャガイモを適当に一つ手に取り、魔力を集中させた。
え、ちゃんと包丁を使って切らないのかって?
いやいや、さすがにこんな量のジャガイモを律儀に一個一個包丁使って切っていくなんて気の遠くなるような作業だよ。
この世界には魔法やスキルという便利な能力があるんだから、それを使わない手はないよね。
料理には効率化も大事なのだ!
わたしはそう納得して、手にしたジャガイモに小さな風魔法を発動させた。
よく魔物相手に使っている、ウインドカッターの超極小版だ。
その極小ウインドカッターをジャガイモに通すと、ジャガイモがバラバラと半円形に切り分けられた。
「よし、上手くいったね! それじゃあここからは……サラ!」
「ぷるん!」
「これが今わたしが切ったジャガイモなんだけど、これと同じような感じで他のジャガイモも切ってくれたりとかできるかな?」
「ぷるーん!」
「ありがとう!! それじゃあ、一旦このジャガイモを吸収しちゃって!」
サラはテーブルの上にぽよんと飛び乗ると、ぐにぃ~っと広がってテーブルにあったジャガイモを全て体内に吸収した。
これで、全てのジャガイモを切っていく準備が整ったね。
え?
包丁を使わずに魔法で食材を切るだけじゃなく、その作業も従魔のサラに任せるのかって?
だから言ってるでしょ。
料理には効率化も大事なのだ!
例えわたしが魔法を使ってジャガイモを切り刻んだとしても、さすがに個数が百個とかにまでなるとある程度の時間がかかる。
だけどサラの持つ簡易解体というスキルを活かせば、ジャガイモを解体することで一瞬にして半円形に切られたジャガイモが量産できるのだ。
それに、ポテト作りにかかせない工程は特定の形に切っていくだけではない。
「ぷるーん!」
「お、ジャガイモ切り終わったかな? それじゃあ、今度はその切ったジャガイモを水につけてデンプンを抜いてくれる? 水はわたしの水魔法で代用するから!」
「ぷるるーん!」
「よーし、それじゃ水を出していくから体内に吸収してね」
わたしは適当に水魔法を発動させ、手のひらから水をザァーっと流した。
その真下にはサラがいて、スライムボディに水が接触した途端に体内に取り込まれていく。
これで、サラの中で水とジャガイモが混ざり、しばらく経ったらデンプンが抜けて美味しく揚がるようになる。
ポテト作りには、このデンプン抜きの工程が大事。
ここを疎かにすると、いまいちなポテトに仕上がってしまうらしい。
まあ実際にポテト作りを行うのは始めてだから何とも言えないんだけど、昔に興味本意で色々な料理のレシピを見ていた時にそのような記述があったのを覚えている。
「さて、後は何分くらいかかるかだね。わたしが昔に見たレシピだと、大体一時間くらいジャガイモを水につけてデンプンを抜くって書いてあったような気がするけど……」
「ぷるーん!」
「ん? サラどうしたの?」
「ぷるるん!」
「も、もしかしてもうジャガイモのデンプン抜き終わったの?!」
「ぷるん!」
早っ!?
レシピには一時間くらいかかるって書いてあったけど、もうできたの!?
これもサラの持つ簡易加工のスキルのおかげなのかな。
もう少し時間がかかるかと思っていたけど、これは嬉しい誤算だ。
次は早速このジャガイモたちを揚げていこう!
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