第2話 魔法に目覚めちゃう、ぽっちゃり
蒸発した神さま。
ゆっさゆっさと揺られ、縛られるわたし。
そして、ギィー、ギィー! と、興奮したゴブリンたちのうなり声。
結論、とてもマズイ状況だ!
「異世界にひたってる場合じゃない。まずはここから脱出しないと!」
さっき神さまが消える直前に、脱出しないとゴブリンキングに食べられる、とか言ってたよね?
つまり、ゴブリンキングはわたしをエサとして認識してるってことだ。
そしてわたしは、ゴブリンキングがいる巣に向けて運搬されている真っ最中。
だったら、何としても巣に到着する前にここから脱出する必要がある。
わたしは耳を澄ませて、下から聞こえてくるゴブリンの鳴き声を聞いてみる。
「うーん、結構な数がいるなぁ。多分、二〇体以上はいそうな感じだね」
ゴブリンといえば雑魚モンスターのイメージがあるけど、二〇体もの数を同時に相手してどれくらい勝算があるものなんだろう。
うん。
考えてみたけど、わたし一人では勝てる気がしない。
雑魚とはいえ、ゴブリンも立派なモンスターだ。
それに何より、わたしにはダッシュで逃走するという選択肢が使えない。
スタミナがないからね。
そこでわたしは、お腹に乗っているスライムを見た。
ぷるぷると静かに揺れている。
このスライムは神さまが
スライムが最強魔王になったり、無双したりする作品も見たことあるし!
「えっと、あなたはわたしの味方なんだよね? この縄ほどける?」
「ぷるん?」
スライムはぷるるんと震えた。
…………待ってみても何も起こらない。
もしかしてこのスライムって攻撃力ないの!?
本当に雑魚モンスターなの?!
フォルムは可愛いから癒されるけどさ!
くそぅ。
やっぱり、わたしが魔法を使って自力で逃げ出さないとダメなのか……。
「えっと、たしか魔力を集中させるんだっけ? 魔力……魔力……むむむ」
わたしは魔力というものに意識を向けてみる。
言われてみればだけど、何だかお腹のあたりに違和感というか……エネルギーが流れているような気がする。
これが魔力ってことなのかな?
単にお腹減ってるだけじゃないよね……?
わたしはこのお腹のエネルギーを魔力だと信じて、次に魔法のイメージ作業に移る。
「まずはわたしを縛ってる縄をどうにかしないと。縄を切るにはなんの魔法が良いんだろう? 火……だとわたしまで燃えそうだし、水……は今は意味ないよね。だったら……風?」
アニメで風の刃や斬撃を飛ばしたりしているキャラクターを見たことがある。
あれをイメージして、再現できないかな?
わたしはお腹の魔力っぽいものを意識しながら、縛られている縄が切れるようにイメージをする。
「出てこい、風の刃……!」
すると、わたしの周囲に薄い緑色の風が吹き込んだ。
シュバッ!
パラパラパラ……。
お腹を縛っていた縄が、バラバラに千切れる。
「やった、成功だ!」
なるほど、こういう感じで魔法を発動するのか。
何となく分かった気がするぞ!
「それじゃあ慎重に起き上がって、と……」
わたしはゆっくりと起き上がり、きょろきょろと周りを確認する。
やっぱり緑の木々が目に入るから、森にいることは変わらないね。
「でも、何だか目線が高いような……。それに、なんかわたしが乗ってるのも毛がふさふさしてるよね」
わたしは自分が乗っかってるものを見る。
茶色の毛が全体に生えていて、まるで生き物が歩いているかのようにゆっさゆっさと揺れている。
うわぁ、これってやっぱり……。
わたしはゆっくりとその場に立ち上がり、より高い目線から確認してみる。
そして、わたしは目を見開いて驚く。
「やっぱり、これってめちゃくちゃおっきな動物じゃん! いやこの場合、魔物ってやつ!?」
「ギギィ!? ギィー! ギィー!!」
わたしがマンモスのような魔物にビックリしていると、下にいるゴブリンたちが急にわたしを指差して騒ぎ始めた。
しまった!
あまりにびっくりしすぎてつい叫んでしまった!
「や、やばい! 逃げる前にバレちゃった!?」
わたしがパニックになっていると、後ろにいるゴブリンが弓を引いていた。
さらにその横のゴブリンは、大きな杖をわたしに向けている。
ちょ、ちょ、まさか弓矢とか魔法を撃ってくるつもり!?
そう予想した瞬間、勢いよく矢が飛んできた。
わたしは慌てて頭を下げて、回避する。
「あ、あぶなっ!?」
わたしは頭を両手で守りながら、情けなく這いつくばっている体勢だ。
その真上を四方から何本もの矢がビュンビュン通過していく。
「ひえぇぇぇ。異世界のゴブリンめっちゃ怖いんだけど! ゴブリンは雑魚モンスターとか言ったの誰!?」
驚くのもつかの間、わたしは嫌な予感がした。
さっきわたしが風魔法で縄を切り刻んだ時のような、魔力の流れっぽいもの。
わたしは恐る恐るマンモス魔物(仮称)から頭を出してゴブリンの様子を
そこには、さっきわたしに杖を向けていたゴブリン。
その杖には、真っ赤な魔力がみなぎっていた。
「うわぁぁあ! ま、まさか炎の魔法!?」
あれはヤバイ!
火炎放射みたいな範囲攻撃を食らったら避けられない!
わたしは逃げるために急いで反対側へ移動しようとして、
「――へっ?」
ずるり、と足を踏み外してしまう。
あ、オワタ。
「うわぁぁああああああああ!」
一瞬の浮遊感を体験した後、そのまま五メートルくらいの高さを落下していった。
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