第10話 日の本のレイライン
BDD 二●一三年六月二十一日(金)
ポイント①
ポイント● 二年C組(加賀見台中学校)
ポイント② 皇居正門前
ポイント③ 明治神宮(東京都渋谷区)
ポイント④ 富士山頂
ポイント⑤
ポイント⑥
ポイント⑦
ポイント⑧
ポイント⑨
マクスウェル
日本列島の東から西へ、全長一〇〇〇キロメートルの〝光の矢〟を突き通すのである。
光の伝達には〝鏡〟を使う。
協会公認の「レイ・ミラー」は直径四十六センチの正円形。
三種の神器の「
ポイントごとに二枚の鏡が用意される。
一枚で受けた光をもう一枚に反射させ、次のポイントへと
もちろん光そのものはポイントを経るたび弱まっていく。
要は、光のパルス信号が伝わればいいのだ。
協会の記録では、九州・霧島神宮を通過したパルスが中国
「パルスの伝達はそれほど難しいことではありません。会員の皆さんはこの道のプロフェッショナルですからね」
レイライン研の部室────。
夏至を明日に控え、日本支部長・佐々木徳治郎が、
「ただ、イメージの伝達はいまだ成功したためしがないのです。会員の中には古代人にもそんな超能力みたいな真似は無理だろうと言う人もいます。わたくしは、信じていますがね」
マクスウェル卿が懐中電灯で照らす光を、鏡で受け止め反射する練習だ。
「だから、協会としてもあなたがたお二人に賭けているのですよ。様々な情報を電波に乗せることに慣れてしまった現代人が、微弱なパルスで意思を伝え合うのは至難の業だと思うのです。でも、あなたがたお二人には切実な動機がある。二Cで
楓が受け止めた光が、沖村の鏡にあたって白く光った。
「グッドゥ」マクスウェル卿が親指を立てた。
楓はレジスタンスの同志である沖村と目を合わせた。
沖村の目が眼鏡の向こうで微笑んだ。
彼の顔は眼の白目と右頬だけ妙に白い。
そこ以外はすべて黒いからだ。
楓も同様に額に丸く肌色が残っているだけであとは全身真っ黒けだった。
これこそ江里加が警告していた赤神晴海の切り札。
「
二人は白痣を残して黒い人になっていた。
「安心したまえ。
「黒痣現象の生理学的なメカニズムは、おそらくこうだ。ミス・アカガミの呪術で刺激を受けた脳内、
「なるほど」と沖村。
本当にわかっているのか、と楓は首を傾げた。
レジスタンスは一人減ってしまった。
土山三千代が脱落したのだ。
彼女は最高奥儀で黒く塗りつぶされたショックで寝込んでしまった。
「しょうがないよ。女子にはちょっとキツすぎるよね」
「わたしも女子だけど」
「そうだった」
二人は黒い顔に白い歯をむき出して笑った。
一応、親が見るとびっくりするので、映画部のエキストラ用の特殊メイクで撮影が終わるまでこのままという話にはしてあるのだが。
「沖村君だって、優等生でクラス委員なのに
「らしくないかな。ぼくみたいなのは、どっちかというと、損得考えて赤神さんの手先になるタイプだよな」
「そこまでは言ってないけど」
「でも、ぼくは
「へー。それが?」
「天文部員はいつ何時も『地球は回っている』と主張しなければならない。たとえ天が回っていてもね」
「よくわからないけど、要するに赤神さんが嫌いなんでしょう?」
「魔術は科学で
「だって、勝てそうじゃん」
「それだけ?」
「うん。最初はどうなるかと思ったけど、マクスウェル卿と佐々木さんが現れて流れが変わった。わたしの好きなパターンだよ、これは。マンガの話だけど」
「お車の用意ができたようです」と佐々木。「では、そろそろ出撃いたしましょうか」
学校の前に会員のボランティアで送迎車が二台待っていた。
車に乗り込む前に、楓が二Cの教室を振り返ると、人影がこちらを見ている。
女子生徒のようだが、赤神晴海なのか今井江里加なのか、誰なのかまではわからない。
楓とマクスウェル卿は東へ。
沖村と佐々木徳治郎は西へ。
「ハヴァ・ナイス・デイブレイク・アンド・グッラック!」
最終便で羽田から鹿児島へ飛んで霧島神宮を目指す沖村を、マクスウェル卿が
(つづく)
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