第9話 エリカエデ カエデリカ
BDD 二●一三年六月二十日(木)
エリカエデ カエデリカ
計画は
マクスウェル
山開き前の富士山頂や
こちらの動きを察知されないよう、楓たちも部室へは行かなかった。
だから、レイライン研の公式の部員はいまだゼロのままだった。
また息の詰まるような一日が終わり、下校の時間を迎えた。
途中、コンビニに立ち寄り毎号買っている雑誌を購入。
自宅のあるマンションのオートロックの前でインターフォンに向かっていると、
「楓」誰の声かすぐにわかった。
振り向くと、
「ちょっと、いい?」
「何?」楓は警戒する。
「歩こう」
幼馴染とはいえ、友人関係は小学五年くらいで途切れていた。
第一、今は敵同士。
彼女は赤神晴海の手下で親衛隊のトップだ。
楓がお世話係のときは容赦なくこき使われていた。
楓は江里加のやや後ろを歩きながら、彼女の右頬の黒ずみを
江里加は公園を兼ねた幼稚園の運動場へ入っていった。
二人が通った幼稚園だった。
ブランコと鉄棒しかない小さな運動場だが、園児たちはすでに帰ったらしく静まり返っていた。
「それ、マンガ?」江里加が振り向きざま言った。
「そうだけど」楓はレジ袋に入ったマンガ雑誌を持ち直した。
「好きだね。まだ読んでるんだ」
江里加は下を向いて、靴先で足元の砂を軽く
「昔さ、二人でマンガ家になろうとか言ってたよね。すごい絵、下手だったけど。二人で考えたペンネーム、覚えてる? えりか・かえで? かえで・えりか?」
「かえで・りか、だよ」
「あれ? えり・かえで、じゃなかった?」
「どっちにするか迷っているうちに
「ああ、そうだ。あたし、マンガ読まなくなったから」
江里加は懐かしそうに(ふっふっ)と笑っていたが、不意に黙ると地面から顔を上げた。
「あんたたちの動き。全部わかってるんだ」
「えっ」
「赤神にはわかるんだよ。呪術の力で。マックスの研究会に入ったんでしょう?」
「……」
「やめなよ。今ならまだ間に合うかも。赤神には切り札があるんだ。それをやられたら、あんた、ただじゃ済まないよ」
「……」
「一緒に謝ってやってもいい。あんたも親衛隊に入れるように頼んでみようか」
「そんなことより、赤神さんに
「それは無理。あんたはあの人の恐ろしさを知らないんだ。二Cで生きて行こうと思ったら、あの人の言うことを聞くしかない。それが嫌だったら、転校することだね」
「本気で言ってるの?」
「本気」
長い沈黙が続く。
「今日ここで会ったことは忘れて。やっぱ、あんたとはもう仲良くできない」
「別に構わない。江里加があの人の味方なら、わたしの敵だよ」
「忠告はしたからね。じゃ」
江里加は
(つづく)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます