漢共が空に吠える

@rakusukee

第1話 俺、校舎に立つ!!

俺は怠惰な人間だ。

家から駅まで走れば間に合う時間帯に家を出ても、

「汗かいちゃう」、「必死感を出したくない」、

はたまた「走るのはダサい」という陸上部の存在意義を根底から否定する考えのもと、遅刻を選ぶ。

もし俺がメロスであれば確実にセリヌンティウスは

「どしてぇ、ボクがぁ…」と溢しながら処され、妹の結婚式には確実に遅刻していたであろう。

そもそも俺一人で妹を育てられるかもあやしい。

てか無理ポ。


まぁそんな怠惰な愚者であったがため受験戦争に破れスベリ止めのさらに下の寮制の学校にしか受からなかった。今その学校の入学式と入寮のために乗り換え駅に向かっているのである。夏休み直前の小学生もびっくりの手荷物を抱え電車の優先席に座っていると。黒柳徹子みを帯びた御婦人が話しかけてきた。


「随分な大荷物ですねぇ。何処に向かっているんですか?」


おばあちゃんっ子である俺はこういう御婦人は話し終わると確実ににモンドセレクションや、ポタポタ煎餅といった激ウマ婆婆菓子を無料配布してくれることを知っているため、


「北〇〇〇学校です!」


と意気揚々と答えた。するとその御婦人の情緒はどこぞの峠を攻めてる豆腐屋もびっくりのギアチェンで、


「北〇〇〇学校!?あんな学校の生徒かい!!話しかけなきゃ良かったよ!まったく!!あーあ!くわばらくわばら!!」


と悪態をつきながら降りていった。俺は脳内で彼奴のコードネームを御婦人からクソババアに書き換え

脳内会議でどうやって彼奴に痛い目を見せるかに脳の容量を割いていた。

〜脳内会議〜

「腕力に物を言わそう!!」

「庭に野良犬をを放つとか?」

「ババアの家をグーグルマップで指定暴○団登録しようよ!」

「孫を攫おう!!」

「そんな大人は粛清してやる!」

「ダミープラグに切り替えろ」

「こんな石ころ一つ!押し返してやる!!」


最早ここまでとはぁ…俺。我ながら物騒である。

だいたいこれから入学する期待と不安と少しの後悔で胸が一杯の新一年生に「あんな学校の生徒」呼ばわりはだいぶデバフである。

そんな1ミクロンも生産性のない脳内会議を繰り広げてる間に「あんな学校」に到着である。俺は怠惰だが、今度こそ挫けない!!必ずやまだ見ぬ同級生達と夢の学園生活を送って見せるぞ!クソババア!!


しかし現実とは非常であり神も仏もこの世にいない


〜これから苦楽を共にする同級生達〜

「愛とはロマンだ!!!!」「いや!!悲劇だね!!!!」

「英文読解気持ちぇええええ!!!!!!!!」

「ファック!!ファック!!ファック!!」

「デュエルしようぜ!!」

「滅びのバーストストリーム!!!!!!」

「えー枕もほどほどに噺の方にいきたいのですがぁ」

「方程式で抜け!」

「ドララララララララァ!」

「オンギャ!!……なに見てんだよ」

「アソパソマソは左側に決まってんだろ!!見ろよあの服!!それに頭を配るしバイキソマソのが最後に見る拳は左だ!」

「キティはァ…かぁいいよねぇ〜」


カオスである。なんだこのクラスに一人はいるアイツ変わってるよなの粋を集めたような学校は。

あぁ神よ、俺が何をしたというのだ。ちょっと人より怠惰で皮肉屋なだけで、やった悪行と言えば弁当の嫌いな具を野良犬に食わせたぐらいだというのに。そんなプチ懺悔をしながら歩いていると校舎に到着。体育館に並ぶとすぐに始業式が始まり学校長のありがたいお話である。



「君たちには授業、部活、寮生活を通して礼節を学んで貰う!!怠惰なもの、変わりもの、はぐれもの、そのような学生を矯正するための学校が本校である!!皆、大いに励むように!!」



……………………………………………………

…………………………………………………………………ハァ…


クソババア間違えてなかったぁぁぁぁ!!!!!!!!!

まじで、「あんな学校」じゃねぇかぁ!!!!!!!おい!!!!!

どうりでお袋もあんなせいせいした顔で送り出すわけだ!!!!!!!

クソッ!!!!ハメられたぁぁあぁぁぁぁ!!!!!!!!

いや、まて。まだ全てが終わってわけじゃあない!!

今は入学式。両隣と友達になれればこんなクソみたいな学校でも少しは楽しくなるかもしれない!!!!そうと決まればなんとやら!!!!まずは左からぁ!!


「これからよろしくね★」

『ドラララララァ!!!!』


……………終わったぁぁぁぁ!!!!!!!!!

俺の学園生活絶対終わったぁぁぁぁ!!!!!!

だって初手から他言語何だもぉん!!!!!!!

こいつが今、喜怒哀楽のどのチャンネルで話してるかわかんねぇんだもぉん!!!!!!!!!!!!

 

「……………そっか、それは良かった★」

『ドララァァ!!!!』


っぱわかんねぇわ!!!!左側は撃沈!!!!!!!!!

しゃあねぇ!!!右だぁぁぁぁ!!!!!!!!!


「これからよろしくね★」

『君は引力を信じるか?』


DIOだぁああぁぁぁぁ!!!!!!!

ざっけんな何処ぞの神父みたいになったらどうすんだ!!!!!てか何だこの席!!やべぇジョジョラーしかいねぇぞ!!とんでもねぇ事故物件じゃねぇか!!!!あー終わりだよ終わり!!!



早くもバテぎみな俺のメンタルはこれからもつのであろうか。さらば。







  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

漢共が空に吠える @rakusukee

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ