「お母さん、私もペットが欲しい！」

　夕飯後。

　意を決して、子供が母親に訴える。

「ちゃんと全部自分でお世話するから！ねぇ、いいでしょ？！」

　母親は無言のまま、食後の片付けを続けている。

「あきちゃんちだってワンちゃんいるし、のりくんちだって、ウサちゃんがいるんだよ？私だって、ペットが欲しい！きっと潤いとハリが出るよ！ペットと共にある生活！」

　どこで覚えたのだか、CMのようなフレーズを熱っぽく語る子供をよそに、食卓テーブルの上のドレッシングをしまおうと、母親は冷蔵庫を開ける。

　と。

　ニッコリと笑って振り返った。

「確かに潤いとハリが出るわね。そんなに欲しいなら、ほら」

　そして母親は、冷蔵庫からコーラのペットボトルを取り出すと、子供に与えた。

「……このペットじゃない」

　子供は泣きながらコーラを飲んだ。

　それはいつもよりも、ほろ苦く感じられた。

【終】

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