分析科長 近藤 紀子 映像記録日誌③

◉REC


オリバーは視力が凄く低くて、自然界での行動範囲はかなり狭いはず。嗅覚がオリバーの世界を支配していて、遠くからヒトの臭いなんて、特に軍人は火薬や鉄の臭いが強い為に直ぐ嗅ぎ分けられるとは思うけど、あの金色の体毛は昼夜共に目立つため安易に見つけられるはず・・・・・・


『ディグ・ニダ教』か。


ある政党が各地で広めた宗派の一つなんだけど、中央アジアを経由してここ日本へやってきたのよね。


恐らく調べれば分かると思うけど、元々あそこの集落、廃村は昔から登録されていない村で、ずっと噂だけど樹海に自殺志願者が方々から入り込み、死ぬに死にきれずに迷子となる。そんな人たちが集まってちょっとした集落になったとかなんとか。他には、自殺志願者を待ち伏せして同意ある殺人をすりという殺人狂たちの村が在るとか無いとか。


 実状は麻薬の栽培場所として使われているのよね。『自殺名所』と有名になってからは特に一般人は怖くて踏み入れなくなるし、心霊現象や都市伝説が横行しているから、何かを見たと証言があったとしても幻覚や気のせいってことに出来る。隠れて何かをするにはうってつけってこと。


 だから、私たちもここに研究所を設立している訳だし。みんな考えることは一緒だわ。ここの研究所は樹海の南側。この集落は北側。西、東にも何かあっても不思議じゃ無くなって来たわね。


 そんな噂が本当だったのかどうかは分からないけど、そんな人達がディグ・ニダ教の宣教師と出会い今に至るのか、教徒が都合のいい場所を見つけて居座り集まったのか・・・・・・


 ・・・ってことで、そのカルト集落で捕らえた村人Aの唾液の検査結果だけれども、サル痘キメラウイルスの感染は陰性だった。トラビス及びオリバーの二体による直接的な接触による感染はしない、もしくはこの二体は保菌者ですら無いかもしれない。


 実験体Bモスマンからの単為生殖分裂体からの発生、もしくは何らかの媒体の経由でウイルスが活性化する可能性が高くなってきた。



あ、え?結果がでた??OK。見せて・・・・・・



えー・・・・・・



一般民間人宅へ侵入した実験体B´と接触したヒトたちの検査結果なんだけど、一家全員が

B´本体は?!


んー・・・・・・


ねぇ!ちょっと・・・ここさ・・・これ・・・『飼い猫』がさ・・・うん、そう。お願い・・・・・・



ゴホンッ・・・・・・

えー、最悪な結果かもしれない。


以前の各実験体すべての細胞を確認出来ないからこれもハッキリと断定はしないけど、この実験体B´の細胞には『マイクロキメプラズマ』原虫のシストが見られた・・・でもキメラウイルスは陽性ね。


トキソプラズマの場合の話だけど、この原虫に感染したネズミ、げっ歯類等は天敵にワザと襲われに行く、食われに行くという性質がある。これもまだ研究が最近になって明らかになってきたレベルなのでここも断定は出来ないが。

正確には動きが鈍くなって猫やイタチなどの天敵をという。

トキソプラズマが脳細胞にまで浸食すると宿主にそのような行動の変化を伴わせるらしい。


こういった一種の洗脳支配マインドコントロールの仕組みは原虫だけではない。

カマキリやカマドウマに寄生するハリガネムシ。

この寄生虫は昆虫の腸、腹部に寄生しそこで成虫まで成長する。その後ハリガネムシは水中での繁殖行動をする為に宿主を洗脳し、入水自殺をさせる。


この・・・分裂体の行動。浅倉は『ホカホカ』疑似恋愛性交、コミュニケーションだと言っていたけど・・・このマイクロキメプラズマによるマインドコントロールで支配されていた行動だとしたら・・・・・・?


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