実験体X-2報告書



○○○○年 〇月 〇日


所 長 Ilya Ivanov 殿 


記述者 近藤 紀子


【実験体X-2報告書】



『生体』


・皮膚


 体の表皮は乾燥に弱く、一日の大半は水中にて過ごす必要がある。その特徴は爬虫類や両生類のようにも思える。

 皮膚はワニのような硬質的なものではなく、部分的にヘビの様な鱗状を形成しているが触感はカエルのように柔らかく、粘度のある分泌液を纏っている。その分泌液は鱗状の皮膚部分のみから分泌していて、定期的にそれを全身に鞣すかのように毛着くろう。


 成長時には脱皮を繰り返しその都度よく眠る。


 手足には水掻きがあり、指紋は無い。背びれのようなものは退化している。もしくは背骨が水中移動するための環境に進化過程と言う方が妥当かもしれない。




・摂食、嚥下えんげと呼吸法


 X-2『』の栄養補給方法は他生物の体内にその細長い舌を差し込み、体液を吸収する方法を取っている。先端は棘のように細かい腺毛状になっていて、その先端部分だけを形容するならばそれは毒を抽出しないクラゲの触手、逆に吸収する器官のようである。


 捕食前段階、通常では先端の腺毛部分は舌口内に収納されており、ある程度の伸縮で吐出してくる。

 口腔内からの器官は塞がって舌の収納だけの機能となっている。


 呼吸はエラ呼吸にて水陸両用を果たしているので、現在の生物学的な分類でいうと完全に「」の枠に入ることになるだろう。




・繁殖


 現在ではまだ未知数だが、少なくとも外見上オス生体では無いことは確かである。親世代であるような異質な繁殖手段は今の所は見られない。膣腔、産道といった機能は親と同様に存在しないため、完全に成体となった場合には厳重注意が必要。


 エコー検査では子宮と思われる器官が見られるが、懸念点は下記参照。




・その他


 排泄器官も存在しない。余分な栄養は無いのか、そもそも吸収することが無いのか。

 上記エコー検査で見られる器官というのが子宮などの繁殖機能なのか、消化器官なのかが不明瞭である。


 現状で安心していいのが、恐らくはしないだろうということである。


 知能指数の測定も判断が難しく、他実験体のようなコミュニケーション方法では測定が出来ない。

 水中では何らかの周波数を発していて、類似ではイルカの周波数に近い。いずれは海獣類との接触を実験したいと思う。




『補足』


 今後クローンの生成を主軸として行くのであれば、解剖にて詳細がもっと分かります。指示、判断のほど願います。




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