聴取音声データ 4

「そのあとの、卵胎生で生まれたE-1イレギュラー体はエヴァが、アルバートは浅倉さんが、出生が謎のは、恐らく大野教授がと、個々に世話をしていったのね」


「はい。表向きとして、D親子と、Cの2体が継続案件として上層部へ報告されていました。が未報告な理由としては、まだ他は不確定要素だというのと、解析調査が未完成だからと言われ口止めされていました」


「Dの親子が個別に隔離されたのはなぜなの?職員のPCデータを復旧させたけど、添付データまでは復元できなかったのよね」


「Dのアルマスは、なぜかD-1をわが子という認識がされなかったといいますか・・・最初は、母乳をあげたりと普通の霊長類のような子育てはしていたのです。しかしD-1が成長するにつれ、まったく我が子に関与しなくなり2か月ほど、実験体年齢でいうと約5才ほどの成長度にて、アルマスが自分の子にのです」


「なぜ?」


「わかりません。おそらく『子殺し』かと・・・・・・」


「え?D-1は突然死じゃなかったの?」


「はい。親子の隔離後、D-1の衰弱が見られました。衰弱の原因とみられているのは・・・今回のD親子とトラビス親子は、過去のミッション・ガンマの失敗をふまえて、あくまでも親子は同居にしたかった意向もあります。13世紀ドイツ、フリードリヒ二世の『50人の赤ちゃん実験』はご存じでしょうか」


「ええ、具体的には知らないけど、たしか50人の人間の赤ちゃんに一切のスキンシップを禁じると、50人の赤ちゃん”全員”が1才になる前に死んじゃったっていうやつよね」


「はい。ガンマ以前の失敗は、人間の遺伝子が増えればふえるほどスキンシップなどの精神的要素が原因の1つではないか、と、わたしが進言をしました。ほかにも、人類だけではなく※『ハリー・ハーロウの代理母実験』の前例も提出して、通させていただきました」



≪※ハリー・ハーロウの代理母実験≫

アカゲザルを用いたの研究。針金製と布製の人形をから母乳の供給も経由させ、人形を代理母と認識させてどちらが愛着(愛情)するかという実験。



「成果はあったの?」


「個体差はありますが成功事例が増え、すこしは平均寿命が延びました。実験当初は・・・そもそも実験体の危険度もふまえ、子供とはいえわれわれ人間が不用意に近づくのは危険というのと、ヒトがもっているや病原菌にどんな反応があるかもわからない懸念も考慮していました。今回のガンマ以降は例外ですが、以前はどおりの霊長類限定でしたし。その研究はもう何年もしてきていますので、実験体の傾向や対処もわかってきて細心の注意をはかりながら、可能なかぎりのスキンシップを取るようにしていました」


「なるほど」


「あと、言語習得の意図もあります。本研究の最終目標は『』ですよね」


「・・・ええ」


「コミュニケーションが取れない兵士なんて、ただの野獣ですから」


「たしかにそうね。だからさらに次世代の実験体も大野教授、浅倉さん、エヴァ各々の手元で育てる判断をしたのかしら」


「たぶん、そうだと思います。わたしはこの実験の佳境に入ったと感じていました。なのでアルビーをわが子のように、本当に、大切に接してきました」


「・・・・・・」


「・・・で、すいません、Dアルマスの子殺しですが、これも推測になりますが動物界にも子殺しの前例がまれにあります。アリやハチなど種の繁栄のための自己犠牲とかではなく、ライオンなどの家族構成がしっかりしている場合、母親側の『連れ子』を噛み殺してしまうっていう」


「ええ、知っているわ」


「オスライオンが自分の遺伝子じゃないと判断しているように、アルマスは自分の子を『』と判断したのだと思います・・・・・・」




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