聴取音声データ 3-3

「対処が一足遅く、”自然分娩”してしまったのね」


「想定よりも成長速度が早く『』でてきました」


「E死亡原因は、それなのね」


「はい」


「その解剖結果を詳しく教えてくれる?」


「卵は胎内にありました。サメ等と同じです。胎内で孵化後に母体からの分泌液を子が経口摂取し、もう1体の胎児をも食べつくしたあと、母体の内部、内臓も食いながら外部へ・・・・・・」


「はぁ・・・もう、いったいどれだけの種の遺伝子を移植したのよ」


「大野さんの単独研究はもう、私にもわかりません・・・Bキメラの段階で、わたしが把握している範囲は、ウサギの繁殖力、ネズミの成長速度、海獣類の頭脳だけのはずなんです。まさか、サメやヘビといった魚類、爬虫類も一部使用していたなんて・・・理論上は適合するはずなんてないのに」


「おそらく、ES細胞にエレクトロポレーションしゲノムDNA移植をしてを作り、胚盤胞期まで培養して仮親の子宮に移植したのかも・・・・・・」


「まさか、パーツごとに作っていったってことじゃ・・・・・・」


「フフ、まさか、※じゃないんだから」



※ソ連の外科医ウラジミール・デミコフ(Vladimir Demikhov)

≪移植実験にて双頭の犬に成功。しかし感染症にて20匹いた実験対象は全て死ぬ。ヒトの心肺移植を実現するのが目的だった≫



「さすがに大野さんでも、外科医的技術は身につけてはいらっしゃいませんよね」


「でも、成熟期と成長速度の効率化には成功しているわけでしょ?RNA遺伝子をなんらかの方法で活性化させることが可能なら、何世代かを経て遺伝情報をも『慣らして』いったのかもね」


「・・・・・・」


「たとえば、マウスなんかじゃなく大型の爬虫類、魚類などに人間の子宮を作らせて、そのcellセルを母体DNAと混合し、IPS細胞として培養、その遺伝子を通常の、もしくはわたしたち実験体humanzee(ヒューマンジー)の卵子にドッキング(混合胚)・・・※のように」



※英・チャールズ・バカンティ(Charles Alfred Vacanti)

≪ヒトの軟骨細胞を培養しマウスの体に移植。ヒトの臓器といったパーツを他の生物で生成し臓器移植が目的≫



「・・・まさか」


「今までも人類はヒューマンジー、チンパンジーとヒトだけでなく、羊、ネズミとヒトのキメラで人間の臓器や耳などのパーツを作成し、臓器移植に使用しようとしてた、バカンティマウス。ブタとヒトのキメラでヒト血液や臓器をブタに生成させたり、ヒトの神経細胞としてサルの脳だけをヒトにしたり・・・同種でなくても※もありえるなら・・・・・・」



※ライガー

≪ライオンとトラの交配種。≫



「あの・・・近藤さん?」


「・・・あ、ごめんなさい、大野教授の実験データが抹消しちゃってるからつい・・・・・・」


「いえ、私も気になってはいます。ずっと前から・・・・・・」


「せめて、エヴァの研究データ、もしくは記録日記でもあればね」


「・・・・・・」

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