どけ!!俺は転生者だぞ!!

はいぺりごん

第1話 ありきたりな転生

 その日、世界が軋んだ。大半の存在はその事に気付きすらせず普段通りの日常を謳歌していたが、極少数、例外が存在した。共通するのはいずれも他を圧倒する力を持つ存在である事。真の強者のみが感じ取れた世界に起きた異変、しかし原因は一切不明であり、なぜ起こったのかを理解出来た者は一人としていなかった。世界の軋み、果たしてそれは何かの前兆なのか。世界が上げた軋みは歓喜の産声か、悲哀の嘆きか、断末魔の絶叫か。世界は何も語らず、何も変わらずただそこにあり続ける。だが覚悟せよ。世界が軋みを上げた理由。その原因が判明した時、世界は混沌を迎える事になるだろう――――



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 転生と言ったらやっぱテンプレが一番だと思うんだよね。神様に会ってチートを貰って赤ちゃんスタート。小さな頃から魔法を使う為の訓練なんかして、ちょっとドジって両親の前で魔法を使っちゃって。この子、天才では!?なんて子煩悩な両親が親馬鹿発揮して魔法の家庭教師を雇う事になって、その家庭教師が実は知る人ぞ知る天才魔法使いでエルフだったりなんかして。魔法の訓練の為に近くの森に行ったら偶然襲われてる馬車に遭遇、助けたらなんと中から可愛らしい女の子が!お礼をしたいと言うので着いていったらそこはなんと領主様が住んでる屋敷で、類まれな才能を見込まれて娘さんの護衛として一緒に魔法学園に通うみたいな?


 ありきたりだろうが何だろうが、そういう俺TUEEEハーレム王道もので良いと思うんだよね。自分が実際に転生するとなったら尚更に。といった事をベビーベッドでバブバブしながら考えていたわけだけど、現状は振り切れてないにしてもマイナス100点といった所だろうか。まず一番重要である神様とやらに会うイベントが発生していない。だからチートがあるかは分からない。この時点で今生がプラスになる事はまずないことが確定。


 だけどこの世界にはどうやら魔法があるっぽい。俺の面倒見てくれてる人が、何も持ってないのに明かり出したりしてるんだよね。窓開いてないのにそよ風吹いてたりさ。体の中に何か得体のしれないものがモゾモゾしてる感覚があるから、これが魔力なんじゃないかなって思う。寄生虫とかじゃないよね?とりあえずプラス50点。


 次に俺の生まれた家、どうやら貴族らしい。マイナス30点。なんで貴族がマイナスかって?異世界転生で理想なのって、孤児か捨て子でスタートして、実は凄いけど隠遁してる人や上位存在に拾ってもらうパターンだと思うんだよね。次点でごく普通の一般家庭かな。貴族はぶっちゃけ大外れだと思うんだよ。礼儀作法とか覚えるのも面倒だし、そもそも王族や貴族を敬う気持ちなんて一切持ってないし。親ガチャ成功しただけの奴ら相手にゴマ摺ったり取り繕うのってだるいよね。


 加えて貴族に転生した場合の主流って、ほぼほぼ全て噛ませか悪役だし。何が悲しくて殺されたり追放されることに怯えて、それを回避する為に善行積まなきゃいけないんだか。他にも領地経営とかあれば非常に面倒くさい。領民の生活なんて全く興味ないんだけど。自分が好き勝手食っていければそれでいいでしょ。とまあ、俺にとっては転生ものの貴族って存在自体が罰ゲームなんだよね。


 あと許嫁とかも最悪かな。NTRとか断罪イベントとかまじ勘弁。それに仮にその子がどんなに美人で一途だろうと、俺は100点の美人一人より70点の可愛い子100人を選びたい。100点の美人が悲しんでる中で70点の子達とはとてもじゃないが遊べない。それに貴族の子供だと面子とか家格とか序列とか体面とか凄く面倒くさそうだし。目に見えてる地雷は避けて当たり前でしょ。


 不幸中の幸いなのがどうやら俺には双子の弟がいるってこと。プラス5点。全てをこいつに丸投げすれば全部円満に解決する。なんて出来た弟なんだ。将来は立派にこの家を継いでくれ。俺は出奔するから。


 現状だとマイナス-75点か。最悪じゃないけど非常に悪い。これで実は魔法が使えませんでしたとかになればもう死ぬしかないね。魔法さえ、魔法さえ使えればどうにか生きていく気力も湧いてくると思うから、頼むよ神様。

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