第45話 文化祭

コスプレして異能を活用した芸は大盛況だった。

それは、ほかのクラスが異能に依存しない出し物をしたおかげで、こちらに注目が集まってたからだ。


特に注目されていたのは、遺憾ながらオレ、涼香と縁の三人だった。

異闘のおかげで練度が上がったオレと涼香に、異能を使って身体強化してジャグリングの成功率を上げた縁。

どれもレベルが高いと評判になり、口コミが広がっていた。


オレがバニー姿で披露するディアブロ。

警棒の先端に糸状の丈夫かつ粘り気がない粘液を生成して、それでコマを操作した。

今の練度では容易いことだ。


疑似異能の結界の装置がないため、涼香は水芸で生成した水を回収しやすくするために足元にビニールプールを敷いて行う。

オレが道連れにして着せたバニースーツにより男性客(ロリコン共)が歓喜で拍手喝采が印象に残ってる。

水芸は某女神と遜色ない程のパフォーマンスを見せて盛り上がる。

たまに生成した水が胸元が落ちるは宜しくない。

あれで一斉に見る目が変わった男性客を殴りたくなったのだから。


縁は異能を使うことでマニアックな猫耳メイドとして、観客の前に出てジャグリングを披露する。

そのパフォーマンスは普通にクオリティが高く盛り上がる。

集中力を使っていたために、観客に笑顔を見せることなく真剣な表情はクールで良き。


三人はとりあえず自分の番が終えたので、第二部の自分達の番まで休憩時間となり一緒に文化祭探索をする。

服装は勿論コスプレ衣装ではない。

オレと涼香はバニスーツの上に学校指定のジャージを着て、縁は完全にジャージを着ている。


「いやー、めっちゃ緊張したよ。 すごく視線が集まって失敗するかと思ったよ」

「そうね。 私も感じてたよ。 特に、ゆりちゃんの視線がー!」

「いや、そこまで凝視してないよ!?」

「ふーん、視線の先がずっと胸元だったのは私の勘違いかなー?」

「そ、そうじゃない……」

「あんな恰好ですずかっちの胸、すっごく揺れてたからね。 仕方ないっしょ」

「そうそう。 これからはオレに強要しない服を選ばないことだね。 そうしたら涼香に似合う服装を選べるのに」

「何でゆりっちはすずかっちの服を選ぶ権利があるのよ」

「だって、オレだけあんな恥ずかしい服着たくないし。 一蓮托生?だよ」

「それルビに道ずれって書くでしょ」

「そうとも言う」

「私はゆりちゃんがいいなら一蓮托生や一心同体でもいいよ」

「これ本気で言ってそう……」


三人は自分たちの出し物について語りながら、邪魔にならないよう並びながら廊下を歩く。


「ん? 喫茶店とかやってるんだ……」

「本当だ! 少し入ってみる?」

「いいんじゃない?」


目に入った模擬喫茶店の中へ入っていく。

そこで4人席に座り、少しのんびりしようと意見が合う。


このクラスのオレ達のクラスの様に異能をメインに置いた出し物ではなく、多少の動作で異能を発動して接客等している模擬喫茶店。

メニュー表はソフトドリンクやケーキと言った市販品が用意されている。

値段も市販品の価格よりちょっと上乗せした値段だ。


「今は甘い物が食べたいよね」

「そうだね」

「ショートケーキ、チョコケーキ、モンブラン、チーズケーキどれも美味しそうで迷っちゃう」

「オレはモンブランを貰おうかな。 あの栗クリームが溜まらんよね」

「じゃあ私も~」

「涼香も一緒?」

「いや……だった?」

「そんなことはないよ。 ただ、別の物だったら一口交換できそうだなと思っただけ」

「っ!? ゆりちゃん……、そんなことを思ってたのね! まさかゆりちゃんから間接キスを所望とは……」

「いや、ただ色んな味を味わいたいだけでしょ……。 前もそうだったし」

「前って何?」

「あっ、やべ…オレ

「前って何かな? かな?」


メニュー表を見ながら縁はツッコミを入れたと思ったら失言したことに気づいた。

そう、これは前の話。

涼香が用事で遊べなかった休日に、二人が丁度暇だったためオレから街に出かけないか誘った時のこと。

二人でウインドウショッピングを楽しみ、休憩をかねて間食ついでに喫茶店を寄ってお互いに食べ合いっこをした記憶。

このことは涼香は知らない。


ハイライトがない虚ろな目で縁を見つめる涼香。


「縁ちゃんは敵じゃないと思ってたのに……」

「は、早まらないで! ゆりっちも何か言って!」

「んー?」


縁からパスを貰ったので援護をしようと思ったら、涼香がこちらに向いてあの瞳が目と鼻の先まで近づく。

それはもう、背中を少し押せば事故でキスをする距離まで。


異闘をやって強くなったせいなのか、嫉妬による圧はこれまで以上に成長していた。

この状態を収めるには尊い犠牲オレが必要だ。


「涼香」

「何かな?」

「一緒に"あーん"して食べ合いっこしよ。 ね?」

「……。 うん、するー!」

「助かったー……。 ありがとう、すずかっち」

「良いってことよ。 これは貸しだよ」

「貸しって?」


すると、縁のスマホに一通のメッセージが届く。


『またデートしようぜ。(๑•̀᎑<๑)و』


縁は思った。

この子はまったく懲りていないと。


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