第3話 私の豪運はモフ☆モフを届ける。

私は和倉レノ16歳。世間で言うところのピチピチの可愛いJKである。


笑った目の前の君!後で私の取って置きの三発目(ラストブリット)をあげよう。


私の生まれ持っての豪運を乗せた拳は、神をもうならせる豪腕である。

って酷くないですか?作者さん・・・・この設定何とかしません!?


そもそもギャグメインなのに、初っ端から感動フルスロットルってまずくないですか??

べ、別に小さい胸とか・・・可愛く無いとか気にして無いんで・・・。


おい、聞けっ!!!

ドゴッ!!


・・・・・



変な夢から覚めた私は、快晴の大空に程よい日差しと心地よい風が吹く草原にいた。

そしてスタート地点には高品質クッションがあるらしく、近くにあったに頭を乗せていた。


「んー、これは中々・・・。」


サバトラ模様の整った毛並みは雪に埋もれる様な感触を示しつつも、優しく跳ね返してくる。

さながら人を駄目にするクッションと言ったところだ。

たまに、うごめいたり「やめるにゃー」とか聞こえるけど気のせいだろう。


「おい、人間!あんまり調子に乗るんじゃ無いにゃ」


「って本当に喋った。まぁいいか」


私は気にせずに近くでうねうねしている尻尾を掴む。


「にゃ!?そ、そこだけはダメにゃ・・・」


「何でぇ?」

掴んだ尻尾の根元から先まで手を優しくスライドさせる。

そのクッションの毛並みが一斉にそばったと思っていたら大声で叫んだ。


「んにゃぁあああっ!」

高品質クッションは力が抜けたように肩で息をしていた。


「面白い。」


「いい加減に・・・・!」


突然、頭を乗せていたクッションが消えて目の前に猫の獣人が現れた。

クッションが消えたので少し地面に頭をぶつけてしまった・・・痛い。


猫の獣人はよく見ると綺麗な顔をしていて華奢きゃしゃだった。おそらく私よりも年下だろう。

どこかで見た様な顔だが・・・思い出せない。


「誰?」


「お前が頭を乗せてた奴にゃ!」


「高品質クッション!?」


「そんな変な名前じゃ無いにゃ!」


「ふーん」


「興味なさそうだけど名乗っておくにゃ。私はロモ=クーショにゃ」


「ロモクッション?ブランド物?」


「クーショにゃ。で、お前は?」


「私は和倉レノ、ピチピチの可愛いJKです。」


「ピチピチ?JK?なんかの暗号かにゃ?」


「うん!世界一可愛い少女って意味ね。」


獣人は微妙な顔をする。どうやら見る目が無いようだ。

「そうには見えないけど・・・とりあえずレノって呼んでいいかにゃ?」


「うん、私はクッションって呼ぶから。」


「素直にロモって呼べにゃ。」


「オッケー」


獣人は私に手を差し伸べて来た。

何か欲しそうな目でこちらを見ている。

生憎、普段近所の猫にあげている餌のチャチャ・チュールは持っていない。


「ん?餌なら持ってないけど・・・転生したばかりだし。」


「私はそこら辺の猫じゃ無いにゃ!なんだお前、転生者かにゃ?」


クッションはゆっくりと此方に顔を近づけてくる。


近い、近い・・・。

16年守り続けて来た乙女の純白をあげる訳にはいかないので丁重にお断りする。


「わ、私・・・そう言うのはちょっと・・・」


何かを察したのかクッションが赤くなる。


「そう言うの?にゃっ・・・ち、違うにゃ!!人間の転生者を初めて見たからにゃ」


「本当かなぁ・・・」


クッションは呆れ顔で呟く。

「そもそも、お前見たいなに興味ないにゃ。」


年下の獣人にバカにされた様な気がした私は、負けじと返答する。

我ながら情けないと思ったが、ここで引いたら後悔する様な気がした。

「は?こっちは16歳なんですけど!」


その言葉を聞いてクッションは口に手を当てて笑い出す。

「ププッ!こっちはお前の3倍以上生きてるにゃ」


「へー」

怒りに任せて適当に返事をしてしまった。

今なんて言った?あの獣人・・・私の3倍生きてる!?

計算すると48歳以上って事か・・・。物持ち良すぎるな、あのクッション!!


「は!?ババァじゃん!!」


その言葉を聞きクッションの毛が逆立つ。

「にゃー!!ババァって失礼なガキにゃ!」


「物持ち良すぎません?獣人は年取らないの??」


「なんか物扱いされてる感じがするけど・・・私は不老不死にゃ。」


目の前の高品質クッションは平然と理解不能な事を言ってきた。

「ファンタジーじゃないんだからさぁ・・・。って、ここは異世界か・・。」


「お前みたいなガキが好きそうな、剣と魔法の世界にゃ!」


「ガキじゃない!!って・・・不老不死!?」


そのクッションは仁王立ちをしながら威張った。

「ふふっ、驚き平伏ひれふすがいいにゃ!」


「つ、つまり・・・死ぬまでモフモフ出来るって事!?」


「そこかにゃ・・・。触ろうとするんじゃにゃい。」

伸ばした手は、獣人の手で遮られてしまった。


「もう少しだったのに。」


「はぁ・・・、まぁ転生して来たんなら力になるにゃ。」


「ありがとう。」


「にゃ。」


私は再び差し出された獣人の手を使って起き上り、近隣の村へと歩き出した。


あ、クッションの背中が私の頭の形に少し凹んでる・・・・。

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