第10話:落とし方を知れ!!

 四月二十九日、時刻は午前七時半まで遡る。莉花と心が寝ぼけ眼で登校していた時のことだった。


「やっぱ、あれはオカシイと思うんすよね~」

「それじゃあ心の言う通りにいきましょう……」

 二人が中身の無い会話をしていると、突然莉花のポケットが音楽を奏でた。




 〽 Why ~~~



「あれぇ? もしかしてスキーターですか!?」

 心は興奮した様子で莉花に話し掛ける。洋楽好きの仲間を見つけたことで。着信メロディーを聞いて、音楽の趣味が合うことを確信したからだ。


「まぁ……ね」

 莉花がスマートフォンの画面を確認すると、「木葉緑」の文字が映し出されていた。




「――しっかりと登校してるぜ! 決闘があるってのに律義だよな。こいつら不良のクセに授業は皆勤で……おっと。

 今日の授業は三時半で終了。五時の決闘に間に合わせるには、遅くとも四十分前に学校を出るはず……。あと――」


 莉花がスピーカーボタンを押した途端、緑の声が大音量で住宅街に響いた。莉花は心に機器を渡し、無言でメモを取り始める。


(……中学生だと知ってんなら、電話かける時間くらい配慮しろよ……)

 心は思わず眉を顰める。長電話を要約すると、中学生の本分である勉強にギリギリまで励めとのこと。


「昨日早退している時点で、色々と矛盾してるんですけどねぇ」

 心はヤレヤレという表情でため息をつき、二人は学び舎へ向かったのだ。



   ♢♢♢



 ――現在時刻、午後三時。

 今朝の出来事により、探偵たちは人目を盗んで犀門高校へ侵入している。……結局は不審者として見つかっているのだが。



「そろそろですね!」


 げた箱前まで辿り着いた二人は、そこを通る生徒を観察していった。渡された写真と照らし合わせながら。授業終了が近づくにつれて、人通りが多くなる。


(準備万端で臨む――初めての戦闘だ……!)

 心は高まる鼓動を抑えながら、写真をつまむ力を強めた――

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