第0.5話:Home>都市伝説>日本>C県

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 犀門町の黒い噂



 皆さんは、犀門町を知っているだろうか。C県郊外に位置する、人口ウン万人程度の小さな町のことだ。


 学校は小中高が一校ずつ。中心部にある犀門駅は、一時間に一本しか電車が通らない。普段は町民の足としてコミュニティバスが使用されている――略。

 ここまで聞いた者の多くは同じような感想を抱くだろう。いたって普通の田舎町ではないか……と。



 ではなぜ、この場所にフォーカスを当てているのだろうか。……ここからの説明は笑わずに聞いてほしい。それは――




 犀門町民の正体は……だからである。




 その名も「屠顔人とがにん」。彼らは掌で触れた物体のさせる「掌枯れ《てがれ》」という異能を操るのだ。



 ……安心してほしいが、全員が怪物になるわけじゃない。犀門町で生を享けた千人に一人のみである。しかも見た目はおろか、中身も一般人と全く同じ。解剖学的にもそう。人間を好んで殺そうとするイカレ野郎でもないのだ。


 にもかかわらず――いや、だからこそ昔は恐れられた。今風に言えば、平和村の人狼ゲーム? 殺そうとしない狼に代わって、町人同士による私刑が勃発したのだ。挙句の果てにはモノノ怪狩りに躍起になってしまい……、何人もの罪なき人が殺されたか……。

 


 これは数百年前に起こった話ということを、改めて伝えておこう。



 今日では、西洋化の影響で「ストレンジャー」という俗称も浸透している。相も変わらず「屠顔人」も確認済み。だからこそ、現在は物騒な事件が起こっていない……と思われる。


 しかし、それを表に出す者は皆無だ。治安維持の体制が整備された現代でさえ、屠顔人の生き残った前例はない。インターネットが全世界に普及しているにもかかわらず……だ。

 他者から見れば、自分たちに危害を加えうるヤツらであろう。られる前にるという思考の下、彼らは見知らぬ町民によって始末されているのだろうか……略。




 犀門町では、拭っても拭い切れないほどの汚点が今でも残っている。表面上では良好な関係を築いていたとしても、その罪咎が町民たちを縛り付けているのだ。

 ※ここでは屠顔人については述べないでおく。ここで糾弾するのは町の在り方だけであって、町から生まれ落ちただけの被害者ではないから。



 結論として、犀門町へ行くのはおススメしない。ここまで好奇心を煽ったのは自分なのだが。町民でも、屠顔人でも。誰かに殺されても責任は取れないので。

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 投稿者:ブロッサム(一)

 ニ〇一五年三月三十一日 投稿

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