灰人アシュラ

@himagari

第1話

「走れっ!!!走れ走れ!!」


 土埃を上げながら廃墟となり崩れた街並みを走る三人の男達。

 その背後で巨大な影が爆破音を上げながら地面を突き破り、近くからでは見上げきれないほどの鎌首を上げる。

 

「クソが!こんな所にこんな化け物がいるなんて聞いてないぞ!!どうするアシュラ!?」

 

「アイク!ブロウ!このままじゃ三人ともお陀仏だ!三方向に分かれよう!!」


「了解!恨みっこ無し!生きて会えたら酒でも飲もうぜ!!」


 走る三人は道に停めていたバイクにそれぞれ乗り込み三方向へ駆け出した。


「クッソ!貧乏クジだ!!」


 別れた三人の中で狙われたのは真っ直ぐに進んだアシュラだった。


「まぁ、アイツらを庇った結果なら悪くねぇか」

 

 アクセルを全開に駆けるバイクだが、背後から迫る怪物の速度はそれよりもなお早い。

 

 黒髪の忌み子として親に捨てられたアシュラの人生はお世辞にもいいものではなかった。


 だがアイクとブロウはアシュラを対等な仲間として見てくれていた。


 アシュラはその二人の代わりに死ぬのならば、他の人間のために殺されるよりは幾分かマシな死に方に思える。


「悪い、セイラ」


 アシュラは胸のペンダントを握りしめ、姿勢を低くしてひたすらに前を目指す。


 もはや生き残ることに希望など抱いていないアシュラだが、背後の様子を気にしながらも諦めずに速度を上げた。


「道連れにしてやるぜ、クソッタレが!!」


 アシュラは捨て台詞と共に胸元から取り出したスイッチを押し込む。


 それと同時に怪物の口に飲み込まれた。


 周囲に轟く爆風がアイクとブロウの身体を揺らし、二人はバイクを止めて背後を振り返る。


 立ち上る巨大な爆炎と煙に二人は歯噛みし、それ以降振り返る事なく帰路を辿った。

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