第2話
形のないものを、追いかけ続けている。
何が最初で、どんな動機だったかも。思い出せない。ただ、追いかけている。たまたま目の前を通った車を、なんとなく目で追うような。そんな毎日。
そんな毎日だからか。意味もないことばかり考える。理由のないことばかり探してしまう。彼のこと、とか。ここにはいない。どこにいるかも分からない。
私の感情を取り戻すと言って。彼は消えた。たぶんもう生きていないだろう。
彼に、私の感情なんて求めたことはなかった。私が必要なのは、彼であって。私の感情ではない。でも、彼はここにいない。
だからといって、彼を追いかけるという気持ちにも。なれなかった。
彼を止めなかった。それは後悔している。でも。追いかけるのは。違う。たぶん、この、違うという感覚が。私が失った、感情そのものなのだと思う。感情がないから、彼の心を動かさないように。彼の邪魔をしないように。そういう無感情が。今を招いている。
でも。感情がないから。どうしようもなかった。
「夜か」
夜を綺麗だと思いたくて、この街に来た。この、ネオンと、星空。これを見ても、心は動かなかった。どうしようもなく、心に感情は浮かばない。
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