身代金

みにぱぷる

身代金

2030年、日本政府は増税を続けた結果消費税がついに30%に達するなど、様々な税が増額し、ついに国民のほとんどが脱税をするという事態になった。

日本の経済は当然急激に落ち込んでいき、政府は極度の財政危機に直面していた。

そんな日本では、当然犯罪件数も増えつつあった。

ある日、都内のデパートがギャング集団によって占拠された。デパートを訪れていた数千人の命はギャング集団の手に委ねられることとなったのだ。

ギャング集団の要求はこうだった。

「200億円を二時間以内に集めろ。集まらなければここにいる人間は全員死ぬ」

デパートはいつの間にかギャングの準備した仕掛けにより、全ての出口が大きな鉄の扉で封鎖された。

政府はいち早くこの危機に対応するために「〇〇デパート人員救助募金」のサイトを開設し、金を集めた。

最初の一時間は急激に金が集まっていき、120億円が集まった。しかし、そこからは伸び悩んだ。国民は、政府が金を出してくれると信じていた。しかし、政府の財布の紐は固く閉じたまま、政府は重い腰を上げなかった。

結局、ギリギリで金は集まり、監禁された数千人は解放されて、ギャング集団はその金を受け取って、逃げて行った。

これで事なきを得たように思えたが、その後も一ヶ月に一回ほど、模倣犯による「身代金要求」が行われた。その度、国民は何とか金を払い、危機を回避した。政府は絶対に金を支払わなかった。

政府は国民から批判されたが、政府は聞く耳を持たなかった。


「ありがとうございます」

 首相官邸にて、二人の男が向かい合っている。片方は首相。もう片方は誰だろうか、スーツを着た男。

「きっかり400億です」

 男が首相に400億を渡す。

「逃走経路は確保している」

 

政府はこの危機を乗り越えるため、一世一代の芝居を打った。それが最初に起こった「〇〇デパート人員救助募金」を利用した金稼ぎだった。

一度目が成功した政府は間隔を開けて、二度、三度と繰り返した。そして、どれも成功した。


この作戦で日本の経済は潤うはずだった。しかし、そんなことはなかった。

更に速いスピードで日本経済は衰えていく。

それもそのはずだ、この作戦は、数十人のギャングに支払う謝礼金や、ギャングに与える銃の値段、そして、一晩のうちにデパートの出口を塞ぐ大きな鉄の扉を設置する莫大な費用により、大きな支出があるのだから。

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身代金 みにぱぷる @mistery-ramune

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