恋愛業界、退職します!

澤崎海花(さわざきうみか)

マッチングアプリで知り合った男 1

「マッチングアプリの男と結婚するって!?」


同僚の山崎やまざきはバカにしたようにそういうと、直ぐにデスクへと向かって仕事を再開する。


「ちょっと山崎さん! 私本気ですからね?」


自信ありますからと付け加えれば、山崎はそんな澤村さわむらを鼻で笑うと椅子をくるりと回転させる。


「ちょっと沢北さわきた蓮花れんかが結婚するってよ」


「え、誰と!?」


沢北と呼ばれた男性社員は澤村を見たあと、なんだ嘘かとガッカリしたように山崎の前のデスクに座る。


「マッチングアプリで知り合ったんだって〜」


「あ〜そりゃ勘違いですね」


沢北と山崎は互いに納得し合うと、澤村に考え直せと視線だけで言ってきた。


「もー! なんなんですか!」


もっと真剣に聞いてくださいと山崎に突っかかるが、山崎は面白そうに笑ったあとパソコンを触る手を止めた。


「お、いい案件あるよ」


「いい案件?」


「そ、今の蓮花向けのいい案件」


山崎に近付いてパソコンを覗き込むとそこには澤村よりも若い二十二歳の少女からの依頼が入っていた。


「マッチングアプリで知り合った男と結婚したいけど、本当に未婚で安全か知りたいんだって」


「またタイムリーな」


話を聞いていた沢北がそう言って笑うのを聞いて、思わず声に出して叫んでいた。


「間違いなく安全ですから!! これが証明されたら私を笑ったこと後悔して貰いますからね!」


「後悔すんの? 私達が?」


山崎はそう言いながら、澤村のスマホに依頼内容を送り込んだ。



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