女騎士団長が耳元でアピールしてくるんですが、クセ強すぎて困ります。

だぶんぐる

第1話 女騎士団長のクセ強アピールのせいで「気を付け」出来ない

//SE 砂を踏みながら近づいてくる剣と鞘の音


「おい、貴様。私は列を乱すなと言ったはずだ。私が、貴様と年も変わらず、女だからと舐めているのか」


「この私が、何故、最年少女騎士団長となれたのか分かっていないようだな」


「実力だよ。実力。この若さで王国の四大騎士団の他の騎士団長や五大魔法師団長と肩を並べられ、戦女神エリスと呼ばれるほどのな」


//SE 自慢気にふふんと笑みがこぼれる吐息


「で。貴様はなんだ? そう、ただの団員、しかも、新人だ。つまり……」

「……私には絶対服従、だ」


//SE ため息のようなふぅという吐息


「なのに、なんだ貴様はさっきから……整列も出来ないのか?」


「整列とはその文字の通り、列を整える事だ。なのに、お前はさっきから」


「なに? 列を乱しているつもりはない、だと……いいや、乱している。整列とは皆が同じように並び一つの生命体が如く一体感を見せねばならん。遠くから見てもお前だけ目立っていた」

「ああん? みんなと同じようにしている、だと? いいや、出来ていないな。全くできていない。一緒ではない。でなければ……」


//SE より近づいたことが分かるような声を潜め漏れる息


「何故わたしの目にはお前の姿だけが輝いて見えるのだ?」


「ああ、カッコいい……カッコよすぎるぞ。貴様……ふふ、全く列だけでなく私の心も乱すとはな……不遜、実に不遜だ」


「おい、動くな。後ろを、こっちを見るな。何故かって……? 決まっているだろう? 私がとんでもなくメスの顔をしていて恥ずかしいからだ……! とんでもなくだらしない顔をし、なんだったらちょっと涎まで垂れかけたぞ、じゅるり。くくく……なんだ、見たいのか」


「なに? 背中に胸を当てるな、肩に顎を置くなとは、私に逆らうのか? 私の尊厳? ふん、心配するな。鬼の団長と呼ばれる私が怖くて皆じっと前を向いているよ。幸い、ここは最後尾。そして、これだけ小さな声であれば誰も気づかんよ」


「それより、どうだ。私の身体は……細くはあるが、メスオークよりも筋肉はあるし、メスオーク並みの胸のデカさだぞ。それに、メスオークよりも強い。それに何より、メスオークよりお前の事を想っているぞ」


「この金色の髪もどうだ。先日南の都市で幾百の雷を落とし恐怖に陥れた金獅子よりも美しく本物の黄金のように光り輝いていないか。それに、私は金獅子よりも強い。それに何よりお前の事を想っているぞ」


「何が不満なのだ? お前も知っているであろう美人で有名な青髪の魔法師団副長。アレは私の友人でな。彼女も私のことを『感性は独特だが、顔は誰もが美しいと認める彫像が如き美しさ』と言ってくれたのだぞ。つまりは」


「ガーゴイルやゴーレムよりも私の方が彫像のように美しいという事だ。本物の像のモンスターよりもな。それに、私はガーゴイルやゴーレムよりも強いし、君を想っている」


「あ、ああ……貴様の背中は大きくてあたたかいな。それに、いい匂いがする。君の匂いだ。ふ、ふふふ……人食い花の魅了の花粉でも惑わされなかった私が今、もうくらくらしているぞ。恐ろしい男だ」


「いいか。私の心を乱した罰として今日の訓練が終わったあとで必ず私の部屋に来い。必ずだ、いいな。よおし、では、貴様の背中も堪能したし、訓練に入るとしようか」


//SE かちゃりと金属音が離れ、再び近づいてくる音


「(すれ違いざまに)すき……っ」


//SE そのままかちゃかちゃと音が遠ざかっていく

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