初書き

@Rinnne-rinnne-rinnne

思ってきたこと

 目が覚めても体は重くて動かないしなんのやる気も出ない

 隣のあの子はもうベットから起きてギターを弾いているのに。私を起こさないようにイヤホンをつけて。それでも私には彼女が楽しそうに体を揺らしているのが目に入った。すぐに逸らしたはずだったのに。   

 見られている事に気付いた彼女は耳から白い機械を外してほほえみながら、でも寝起きの私をびっくりさせないような声量で

「おはよう…。よく眠れた?」

「…ん、


ああ、今隣りにいるあの子に私が勝てるものは一つだって無い。あんなに気遣いもできない。ましてやギターなんて弾けやしない。


楽しそうね」



 そう言って、今となっては名前もわからないキャラクターが書いてある枕に顔を伏せた。どこが良くてそんなにそのキャラクターにしたのかわからない。

 どうしてあんなにキラキラとした子が近くにいるのかわからない。きっと彼女にとってはただただ都合がいいところに私が居ただけなのだろう。誰でも良かった。きっと彼女は何も考えていない。私がこんなふうに考えていることなんて考えてみたこともないだろう。


 それでも、いや、だからか彼女が羨ましい。彼女は知らないけど、そう思ってしまうことくらいは許してほしい。まあ、そんなことを思っても本当に彼女になれるとしてもあんなふうに何も考えていない人間になりたいかといえばそうでもないし。自分可愛さというよりかは、他人にはないことが私にはあるとどこかそう思っている節があるのだろう。


その考えはどこから出てくるのか。頭の良さ?習っていたピアノ?

 あれ、今私はなにをしていたっけ…?


 布団の中で友達のいい感じのストーリーにいいねをつけるだけつけて私は見る専。本当に自分が好きなのものは誰にも気づかれないように。


 彼女が羨ましい。出来もしないギターを買って、最初の何日かで弦を切ってしまってもそれですら楽しいのか笑っていた。切れてしまった弦を指でいじりながら言った。

「え〜これ買ったばっかなのに…!弾き方が悪いのかなー?」

 新しい弦を買って、張り直して、また弾き始めた。でも下手くそだ。コードを弾きたがっているのに、鳴っている音の大きさは6通りもある。その時初めて思った。


 ーああ、私はこの子になれやしないー


 楽しそうに変な音を奏でては笑っている。私はリズムがズレては怒られ、違う鍵盤に指をおいただけでも鋭い目を向けられて、変な音を出した日にはどんな反応が待っているかわからなかったのに。そんなことを思い出してしまう。

 でもこの子はそんなことを思われているなんて微塵も知らないからただ楽しそうに音をかき鳴らしている。羨ましいことだ。


「コードよりもタブ譜から練習したほうがいいんじゃない…?」

「確かに!教えてくれてありがとうね!!」

 ギターでテンションが上った彼女は笑顔で言った。


 彼女がギターを始めた理由は、彼女が好きなアイドルが楽器ができる人かっこいい、と言っていたからだと教えてくれた。そんなことで楽器を本当に始めて、毎朝練習して、少しずつ形になっていくギターの持ち方や弾き方は私にとっては歪に見えた。今となっては見たくもない。そんな輝いた目で私を見ないでほしい。きっと私は彼女に対してのそんな思いを一生消すことはできないのだろう。





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