第46話 冒険者会議 議事録 その四

【第八十二回 冒険者会議 議事録】


冒険者1

⇒最近、王都の上空で確認されている飛行物体について情報を募りたい。


冒険者2

⇒「馬車が空を飛んでいた」との目撃情報がある。


冒険者3

⇒馬鹿な。ユニコーンにでも引かせたのか?


冒険者4

⇒いや、ドラゴンに運ばせていたと聞いたぞ。


冒険者5

⇒ここは酒場ではない。与太話はよせ。


冒険者6

⇒ドラゴンの話は私も聞いた。


冒険者7

⇒俺もだ。


冒険者8

⇒龍の駕籠か。まるで神の乗物だな。


冒険者9

⇒で、その龍の駕籠は何処へ向かったのだ?


冒険者10

⇒西へ……。


冒険者11

⇒まさか、盗帝の森へ向かったのか?


冒険者12

⇒冗談はよしてくれ。ただでさえリザーズは地下を自由に移動出来るんだ。空まで制したというのか……!?


冒険者13

⇒ドラゴンを従えるなんて、まるでザルツ帝国の初代皇帝ではないか。


冒険者14

⇒まだ、コルウィルがその龍の駕籠に乗っていたかは分からない。憶測で話すのはよくない。


冒険者15

⇒しかし、コルウィル以外に思い当たる節がない。


冒険者16

⇒そういえばリザーズの奴等が乗るオオトカゲのことを、地竜と呼ぶ地域があるそうだ。


冒険者17

⇒なかなか面白い情報だ。さて、会議に戻ろう。各国の状況を確認したい。


冒険者18

⇒ガルド王国に大きな動きはない。懸念があるのは王家と勇者の関係だ。限界が近づいている。


冒険者19

⇒最近は反王家の貴族が勇者を取り込もうと、動いていると聞く。


冒険者20

⇒いよいよ。危ういな……。


冒険者21

⇒ザルツ帝国はどうだ?


冒険者22

⇒帝国は亜人大陸との貿易を拡大しているらしい。ドワーフの移民も増えているとか。


冒険者23

⇒ふむ。魔人の侵攻が近いというのに、呑気なものだな。


冒険者24

⇒その情報は古いな。最近、アルマ神国の冒険者ギルドでは魔人討伐の依頼が次々と取り下げられているそうだ。


冒険者25

⇒魔人達が、この大陸から手を引いている?


冒険者26

⇒そう考えるのが自然だと思うが……。


冒険者27

⇒魔人国に何かあったのか?


冒険者28

⇒普通に考えれば、今は魔人達にとって、人大陸へ侵攻するチャンスの筈だ。にもかかわらず、大きな動きはない。それどころか、撤退しているような節がある。


冒険者29

⇒魔王に何かあった……?


冒険者30

⇒あり得るな。魔人は魔王の存在によって力を増す。その影響が薄れたから、撤退した……?


冒険者31

⇒逆に考えると、我々人間にとってチャンスということか?


冒険者32

⇒しかし、聖女はリザーズの手にある。各国が擁する勇者は頼りにならない。聖女と成長した勇者が揃わない限り、魔王には敵わないというのに……。


冒険者33

⇒本当にそうなのか? 魔王が弱っているとすれば、他の人間にも可能性があるのでは……?


冒険者34

⇒S級冒険者が集まれば、もしかしたら。


冒険者35

⇒いや。一人いるではないか。


冒険者36

⇒まさか……?


冒険者37

⇒コルウィルだ。

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