チャラ男が実は世界最強のSSS級ハンター〜ハンターで居るために、制約付きの最強スキルを携えて学園に通う〜

あおぞら@書籍9月3日発売

第1章 陰の王とS級クラン

第1話 ナンパ師兼SSS級ハンター

 ———100年前の1月1日。

 地球が突如、異界の惑星と融合した。

 

 それと同時に、地球は従来の3倍以上の大きさになり、世界も大きな変化を見せた。

 

 世界に今まで存在しなかった『モンスター』と呼ばれる異界の生物が現れ、地球の生物を滅ぼそうとするどころか、人類をも滅さんと侵略していた。

 人類は従来の武器では雑魚モンスター程度しか倒せない。

 そのためどんどん生活圏を狭められ、僅か2年少しで従来の大陸の半分を奪われた。


 しかし———異界と融合して7年。


 異界融合後に生まれた子供の中から、特殊な能力と自分にしか見えないステータスボードを持つ者が現れた。

 その者達は、僅か7歳ながら、身体能力のみで世界最強の格闘家を指一本で負かす程の力を持つ。


 しかし、1番驚くべきは《スキル》と呼ばれる特殊な能力であった。


 スキルは、異界が融合してから現れた《魔力》と呼ばれるエネルギーを使って発動する超常的な力だ。

 スキルには等級が存在し、当時はE級からS級、現在ではE級からSSS級まで、多岐にわたって見つかっている。


 その中でも等級の高いスキルは、それほど人間を超越した能力を持っていた。

 

 優に金属を溶かす数千℃を超える灼熱の炎を操るスキル。

 自身の身体をミサイルですら素足で逃げ出すほどに頑丈にするスキル。

 科学では成し遂げられなかった天候を操作するスキル。

 《神獣》として適応進化した動物やモンスターと契約して召喚するスキルなどなど。


 それにより人類はモンスターと対抗することが可能となり、100年経った現在では、モンスターからの侵略を阻止すると共に、前人未踏の新大陸の開拓も同時に行っている。


 そんな世界で、呑気に美人のお姉さんをナンパする奴が居た。

 

「ねぇねぇ綺麗なお姉さんっ! 俺とこの後お茶しな〜い?」

 

 そう、俺———赤司彰人あかしあきとである。

 俺は軽快なノリで出会ったクール系美人のお姉さんをナンパするが、お姉さんは侮蔑の視線を向けると冷たい声色で言い放った。


「無理です。今から彼氏とデートですから」

「そこを何とかさぁ〜! お願い! 何なら全部俺が奢るからさ!」

「い・や・で・す! それでは」


 美人なお姉さんは俺の言葉に全く耳を傾けることなく彼氏の下へと言ってしまった。

 俺はそこで大きくため息を吐く。


「あーあー……また失敗したよ。今時ナンパは成功しないねぇ……。ほんと、俺のスキルってどれもこれも面倒なものばっかだよなー」


 俺は仕方なくクール系美人の跡を追いかけながら、ほんの一瞬、周りにいる全ての人の視界から意図的に消える。

 その間に漆黒の仮面を創造して装着し、戦闘用の漆黒のフード付き外套を羽織った。


 俺はそれから何事もなかったかの様に低いビルの上を飛び乗ると、それを足場にして美人なお姉さんを追いかけ、彼女が見える場所までやって来ると仮面の性能である《双眼鏡》を発動して見守る。

 美人なお姉さんは、彼氏を待ちながらスマホを弄っていたが、直ぐに彼氏と思わしき男が来て、何やら楽しそうに話し始めた。


「チッ……うぜぇ……」


 俺は目の前でイチャイチャし出した2人を見ながらカウントダウンを始める。


「5、4、3、2、1———これは貰っていくぞ?」

「っ!?」

「だ、誰———ってレイド様っ!? 嘘ッ!? こんな所で会えるなんて……!!」


 俺は『1』のタイミングでビルの屋根を蹴ると、2人の間に割り込み、男の手の中にある『魔遺物』のナイフを奪い取る。

 少し遅れて、大きく目を見開き、全身から滝のように汗をかく彼氏君と、俺のハンター時の名前を叫びながら目を輝かせる美人なお姉さん。


 俺は『魔遺物』を封印箱に仕舞いながらお姉さんに話し掛ける。

 

「俺を知っているのか?」

「も、勿論ですっ! 知られているのは日本で主に活動しているというだけで、正体不明のSSS級ハンター! しかし、必ず日本の危機に颯爽と現れ、即座に鎮圧する姿は正に世界を陰から支配する王! そのため付けられた二つ名は『陰の王レイド』様!! 私、だ、大ファンなんですっ!」


 先程までの塩対応とは180度反対の熱烈なアプローチに、俺は仮面の下で引き攣った笑みを浮かべる。


「ふっ……説明ありがとう。それと、君は少し離れていた方がいい。君の彼氏は君を刺そうとしたんだからな」

「えっ……う、嘘……優くん? う、嘘だよね……?」


 美人なお姉さんが今にも泣き出しそうに瞳を揺らしながら不安気に問い掛ける。

 しかし、光の宿らない虚な瞳をした彼氏君は何も答えない。

 

「れ、レイド様……そ、そんな……嘘ですよね……?」

「いや事実だ。だが、大丈夫。所詮は『魔遺物』で操られているだけだ」


 俺は彼氏君の背後に一瞬で移動すると、首に付いている『洗脳蜘蛛』を潰す。

 途端に彼氏君は力を失ったかのような地面に倒れ込んだ。


「これでもう大丈夫だろう。一応病院に連れて行った方がいいと思うが」

「あ、ありがとうございました……レイド様!! 私、一生応援し続けますっ!!」


 美人なお姉さんは俺に涙を流しながらお礼をすると、直様彼氏君に駆け寄った。

 そんな羨ましい光景を眺め、のを確認すると、誰の目にも止まらぬ速度でその場を離れた。

 



「チッ……末長く爆発しろってんだ」


 俺は戦闘服を脱ぎ、仮面を消してから舌打ちをする。

 そして『魔遺物』をとある所に届けるために歩を進めた。



 ———改めて自己紹介しよう。



 俺の名前は赤司彰人あかしあきと


 表では綺麗な女性との出会いを夢見る、しがないナンパ師。

 

 そして———裏では5SSSの一角である。

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