『異端の中の異端』(または、マーラーさまの反撃)

やましん(テンパー)

『異端の中の異端』 (上)


 ぼくは、異端者である。


 国家大総統さまを、あまり信仰していないとされる。


 異端レベルは45度で、逮捕されるレベルではない。


 逮捕されるのは、60度から上であるから。



 しかし、20度から上は、異端者であるとされるのである。


 20度から下なんて、隠し味にもならないだろ。


 なんて言うから、異端とされるらしいけれど。


 毎年、異端尋問試験がある。


 非常に巧妙に仕組まれた試験で、大総統さま代理の『偉大なるコンピューターさま』が採点するのだ。


 結果に反論は認められない。


 正直なところ、バカみたいである。


 まあ、表立っては、そこまでは、言わないけどね。


 つまり、こうだ。


 『異端者であるにも拘らず、その多くは逮捕もされない美しき国、美しき社会。』


 極めて寛容で、人道的な社会であると、国際的には、宣伝されているのだ。


 ただし、ある国際的な指標では、必ずしも『自由度』は、やはり高くはない。当たり前である。


 こうした、『自由異端者』は、原子核の回りを回る電子を象った、おしゃれなバッジを身に付けることになっていて、それを正当な理由なく怠ると逮捕される。


 正当な理由とは、予測しがたい事故、例えばお風呂場で倒れたとか、である。


 バッジの不着用は、2回までは、お説教で済むが、3回目からは教育施設に送られる。


 噂では、かなり、怖い場所らしいとされる。


 入っても、無事、出所できた人は、多数の軽度の人は別として、出所後は別人の資格を与えられて、別の場所に住むらしく、だれが、入所経験者かは、(治安警察)関係者以外にはわからないらしい。


 もっとも、本人自身も、もはや、分からなくなっているような場合もある、との噂もあったが。

 

 これも、人道的な措置らしいとされている。


 もちろん、その以前に、めでたく『異端者』から『信徳者』になれば話しは違ってくるものの、『転向信徳者』は、『純粋信徳者(世襲が多い)』や、『優良信徳者(一級信徳者)』よりは、やはり、下にされる。


 様々な税制や、社会保障の優遇度が違ってくるのである。


 それでも、信徳者になる、メリットは大きいわけだが。


 ぼくは、異端者であることで、しかも、逮捕はされない範囲に居ることに、オリジナリティーを感じていたのである。


 つまり、わが、社会の構造はこうだ。


   大総統

    ↓

   大 臣

    ↓

   純粋信徳者

    ↓

   一級信徳者

     ↓

   二級(転向)信徳者

     ↓

   自由異端者

     ↓

    異端者


✳️さらに細かい分類があるが、省略。 


 🙅🙆🙇🙋🙌🙍🙎🙏


 

 ところで、自由異端者にも、組合があった。


 しかも、多数存在する。


 ぼくは、『音楽的自由異端者組合』に参加していた。


 音楽好きの、自由異端者が集まっている。


 支部では、月に一度、集会がある。


 この組合の中にも、また、セクトがあった。


 『ポピュラーセクト』


 『演歌歌謡曲セクト』


 『民謡セクト』


 『ラップセクト』(新設)


 『クラシックセクト』


 あたりである。


 地域によっては、『シャンソンセクト』や『カントリーセクト』『ロックンロールセクト』があったりもする。


 ぼくは、当然『クラシックセクト』にいたが、地方にあっては、かなりの少数派であり、わが支部には、3人しかいなかったのだ。


 つまり、『異端の中の異端』なのである。


      🙎


 

  

 

 

 


 

 

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