夢日記
山葵 狸
8月25日
目が覚めると学校の教室にいた。かつて通っていた小学校の教室に。
「んぉ~! なんかワクワクするな~!」
距離をまるで考慮していない大きな声に尻もちをつく。声の主は口無か? いやにしては少し高いか。
身体を起こしがてら視線を声の主へと向ける。
そこにいたのは口無……何年も前の。小学校というフィールドさながらの某ヒーローのTシャツに短パン、喉ぼとけの無い平らな首。どう見たって小学生時代の口無だ。タイムスリップでもしたのか?
「なんだよ~そんなジロジロ見て。さては俺の事好きなんだろ」
「は?」
自分の不意にした返事の声色も幼く、口無だけでなく私も同じく幼児化していることに気づく。
「うわぁ! なんだあいつ!」
相変わらず距離を考えていない声に耳を塞ぎながらも、声色の矛先に視点を移す。
そこには黒いヘドロの集合体のような怪物がドアを歪め、すり抜け、教室の中へと侵入してきたいた。
そして次の瞬間重力が左へ傾き、口無ともども黒板へと叩きつけられる。その後を追うようにドサドサと机と椅子が私たちめがけて襲いかかる。
強い衝撃に光のような何かが見えかけるが、痛みはない。しかし身体に嫌な汗をつたっているのを感じ、ぼーっと熱を帯びているような感覚がする。
「ぁぁあああ! んがぁぁああぁぁ!」
怪物がうなり声をあげながら自らのヘドロを腕のように伸ばし、思い切り振りぬく。そこから発せられる衝撃波は私たちのちょうど中心を通り過ぎ、壁へと激突する。そこでは爆発でも破壊でもなく、空間の裂け目のようなものが発生していた。
「こいつはやべぇぜ」
そう呟きながら、口角を上昇させ、口無はおもむろに掃除箱を開けた。そしてそこからほうきと雑巾を取り出した。
「やっぱり汚れは掃除しないとな!」
雑巾をほうきの穂先に巻き付け、臨戦態勢を取り始める口無。それが有効打になるかなんて理解できないが、そもそもこの状況が理解不能なので何も言えない。
「おりゃ――!」
「んがぁああ!」
口無の攻撃開始と同時に怪物が先ほどの衝撃波を放つ。
その衝撃波は口無……ではなく、私めがけて一直線に飛んでくる。
予想していなかった攻撃に私は動くことが出来ず、ただ目をつぶる。
「……大丈夫か?」
目を開くと、目の前には口無がいた。身体に空間の裂け目を作って、息絶え絶えに。
「んがぁぁぁぁ!」
怪物の叫び声の風圧で、私は教室から弾き出される。外ではない謎の空間に。浮遊感に身体が包まれる。
ジリリリリリ……
夢日記 山葵 狸 @wasatanu_
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