黒羊
七西 誠
第1話 佐藤 翔
1 佐藤 翔 (さとう かける)
佐藤 翔は、少し小柄ではあるが決して男の娘ではない。
見た目は、ゆる~く ふんわり ぼ~っとしているが 決して男の娘ではない。
(大事な事なので二度言います。)
中身は、なかなかの頑固で芯が通っている。寧ろ男らしいと言える。
でも興味のない事が殆どで、友人と会話をしている時も聞いているのか、いないのか・・・
一旦興味を持てば、没頭するタイプではある・・・が
今日も、ぼ~っと窓の外を眺めていた。
男3人集まって、彼女がどうとか、好みのタイプがどうとか
今のとこ興味のない話が続いているので、上の空で窓から見える空を見ながら
夕飯のおかずのを何にしようかと考えていた。
此処は、執事に必要な様々なスキルを身に付ける事が出来る専門学校の一画。
学ぶ必要はないのだけれど(スキルは完璧なので)お付き合いとか、色々とあって通っているのだ。
(うん。唐揚げだな。)と思って声に出そうになったので、慌てて口をふさぐ。
すると後方から「しょう」と呼ぶ声がするので、振り返ってしまった。
名前の漢字が(しょう)と読めるので、よく間違われていたからだ。
ふざけて(しょう)と呼ぶ友人もいる。ついつい反応してしまった訳だ。
ほんの少し離れた場所で、同じように振り返る男がいた。
声の持ち主は、その男の方に駆け寄って行った。
桜田 翔(さくらだ しょう)彼の名前だ。
桜田 翔は、佐藤の方へゆっくり歩み寄って来て不思議そうな顔をしていた。
「確か・・・君の名前って・・・さとう かける君だよね?」
佐藤の代わりに一緒にいた友達の方が答える。
「かけるって翔って書くんだよ。おとぼけちゃんな彼の事は、許してやって。」
「そうそう。こいつってこう見えて伝説の執事だからさ(笑)」
「うんうん。甘々伝説な。」
伝説の執事って、甘々って・・・何だそれ?
桜田は、この場の乗りを壊さないように取り敢えず笑うことにした。
一応の処世術は心得ているようである。
何のツボに入ったのはわからないが、佐藤は桜田を見て大爆笑している。
友人達はそんな彼に慣れているのか、ツッコミをいれる事もなく佐藤の背中をさすっている。
「はい、はい。面白いね~」
笑いすぎて咽せている佐藤の背中をトントンと叩きながら、調子を合わせているようだ。
桜田は、この不思議な光景に惹かれていた。
自由奔放、天真爛漫・・・・
この佐藤という男に、賭けてみたいという衝動にかられた。
この男にしよう。
桜田は、意を決して声をかける事にした。
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