理想郷レプリカの夜明け
紫陽花
第1話 目覚め
ある日、わたしは自我が生まれるのを感じた。
暗くて狭い場所で意識が芽生えたわたしの耳に、誰かの独り言のような声が聞こえてくる。
「生まれたか」
「しかし、これは成功なのか? 髪の色が少し違う」
「単なる性差かもしれぬ。女性体を造るのは初めてだから判断しかねる」
「では、しばらく様子を見るか」
「そなた、目を開けよ」
おそらくわたしに言われたであろう言葉に従い、わたしはゆっくりと目を開ける。
そこは広く、真っ白な部屋の中で、わたしは三人の男に囲まれていた。
(さっきのは独り言じゃなかったのね)
なぜ独り言だと思ったかというと、声がみな同じだったからだ。
そして、今目の前にいる男たちは、三人ともまったく同じ容姿をしている。
長い白髪に、銀色の瞳。
服装もみな同じ、ゆったりとした純白の衣装をまとっていて、この真っ白な部屋に溶け込んでしまいそうだった。
そのうち、真ん中の男が口を開いた。
「そなたはわたしたちの仲間だ」
「仲間……?」
首を傾げるわたしに、右側の男が説明する。
「ああ。そなたは100年ぶりに造られた、99番目の始祖コピー "
左の男がうなずく。
「我々は選ばれし存在なのだ」
「…………?」
わたしは、さっきとは反対側に首を傾げる。
「始祖コピー」だとか「
明らかに状況を理解できていなさそうなわたしを見て、男たちが眉を寄せる。
「まだ同期が不完全だったか?」
「あと24時間ほど様子を見てみるか」
「ひとまず、エラー種の奴に説明させておこう」
右側の男が「クロ」と呟くと、すぐに部屋の扉が開いて、白い服を着た黒髪の男が入ってきた。
「お呼びでしょうか」
「クロ、彼女の同期にラグがあるようだ。そのうち完了するだろうが、ひとまずレベル1の知識を説明しておけ」
「かしこまりました」
クロと呼ばれた男が頭を下げるが、三人の男たちはクロのほうを見ることもなく、部屋から出ていってしまった。
わたしがどうしようかと迷っていると、クロがこちらを向いて、また深々と頭を下げた。
「"iks-099" 様。僕はクロと申します。これから貴女様にレベル1の知識をご説明させていただきます」
「えっと……よろしくお願いします」
何が何だか分からないままだが、「レベル1の知識」とやらを教えてもらえれば、少しは現状について理解できるかもしれない。
わたしはクロの説明に真剣に耳を傾けた。
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