第106話 白状
「終わったよ」
クロノソレイユの面々が集まる場所に、ミリィとカルが戻って来た。
2人とりあえず兵士を止血した後、縛り上げて別室に詰め込んで来た。
「後はレーちゃんが見てくれるにゃ!」
全員身動き取れないようにしてあるのでレティシアに任せて大丈夫である。
集まっているクロノソレイユの面々の前には、アンクリシアの騎士団長、魔導師長アグノスに冒険者リョウが縛られた状態で椅子に座らせられていた。
「それで、貴方達は何処の誰なの?」
エルサの質問に3人は口をつぐみ、言葉を発さなかった。
「仕方ないな、拷問するしかないわね」
エルサの言葉に、騎士団長が反応した。
「ふん、小娘どもの拷問などで口を割るわけがない」
「その小娘に一撃でやられたおじさんがなんか言ってるよ、キイちゃん」
「ほんとだね、なすすべなく一瞬でやられたおじさんがなんか言ってるね、カリンちゃん」
カリンとキイのバカにしたような言葉に、騎士団長はプルプルと震えている。
「まあやってみりゃ良いじゃねえか。自信あるなら頑張るんじゃないか?」
とりあえず、と言った感じでユイトが騎士団長に電気を流した。
「ガガガ……」
さすがに大口を叩いただけあって、1度目の電気ショックには耐えたようだ。
「よし、次はお前、行っとくか?」
騎士団長が苦しそうに呻く隣の人物にユイトが手を伸ばそうとした時であった。
「あ、アンクリシアだ。アンクリシア王国のユーリカ王女の命令で戦争を仕掛けた!」
一度も電気を流す事なく、冒険者リョウは全てを暴露した。
アンクリシア王国は、戦争の理由を作る為、クロノソレイユに偽装した自軍に自国の町や村を襲わせ、それをクロノソレイユの非人道的行いとして戦争を起こす大義名分にした事。
細かい悪事に関してまで包み隠さずに吐いた。
「ク、貴様、ユーリカ王女を、アンクリシアを裏切るのか……貴様の女がタダで済むと思うなよ」
先程の電気ショックで苦しそうにしながら、騎士団長はリョウを脅した。
「そんなの知らない! 拷問なんて俺は嫌だ! ユカリだってどうだっていい! アイツは全部人任せにするヒモなだけだ!」
恐怖に涙を流しながら叫ぶリョウの姿に、女性陣はもちろん、ユイトも顔を顰めて「最低だな」と呟いた。
今聞いた話だけだと、我が身可愛さに自分の女を捨てるような発言に聞こえた。
「でも、もういいか。大体ゲロったし、今の音声録音してあんだろ?」
ユイトの言葉に、エルサが頷いて肯定した。
「ケイトに連絡を入れるわ。今の話だとアンクリシアは宣戦布告をして来てるでしょうし、この音声があれば、証拠は十分でしょう」
驚愕に顔を染めたアグノスが「声を記録する魔道具だと?」などと声を漏らしている。
「ふん、その発言だけでは真実とは限らん!」
その言葉を聞いた騎士団長が苦し紛れに言った。
「大丈夫よ、その人を脅したあなたの言葉が真実の裏付けになるから」
エルサがそう言い残すと、クロノソレイユの面々は部屋を出て行った。
アンクリシアの3人が残った部屋で、騎士団長はリョウを睨む。
「クソ、俺は望んでこの世界に来たんじゃないんだ。普通にバイトに行って、次の日に学校に行って、月末に欲しい物をバイト代で買うはずだったのにぃ……」
ほぼ一年、この世界を威勢よく冒険した男の言葉としては説得力の無い後悔の言葉は、誰にも反応されなかった。
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