第76話 帰還
ケイトはアスカを日本に送り帰した後、フレミュリアの港町に向けて出発した。
アスカを送還する際の魔法陣と光が、勇者召喚の時の物と酷似していた為、国王達は本当に送り帰す方法があった事に驚いていた。
フレミュリアの迷惑勇者やモトキの時とは違って、怪我も何もなく帰っていったので、国王達の印象は良かっただろう。
数週間の馬車の旅を終えて、ケイト達の乗った馬車は港町へとたどり着いた。
ついこないだのはずなのに、潮の香りが懐かしく感じる。
ミステルトは、早速目的の人物を見つけて大きく手を振って声をかけた。
「おーい、レーちゃーん!」
その大きな声と、元気に手を振るミステルトと、隣に居るケイトに気づいて、ミステルトが声をかけた人物、レティシア嬢は大きく手を振り返した。
「ただいまなのじゃ!」
ミステルトが駆け寄っていって元気に挨拶をした。
その後ろについていって、ケイトも挨拶をする。
「この度は、ご迷惑をおかけしました」
「迷惑はかかってないけどね、心配はかけたよ。でもね、ミステルトちゃんと主ちゃん、2人揃ってこうやって帰って来て良かった」
レティシア嬢は、目尻に浮かんだ涙を人差し指で擦りながら再会を喜んだ。
「よし、そうと決まれば!」
レティシア嬢は勢いよく声を上げたかと思うとパンと柏手を打った。
「今日の仕事は休みだよ!ミステルトちゃん、潮干狩りだ!主ちゃんにとびきりの貝料理を食べさせてあげるんだよ!」
「おうなのじゃ!」
張り切る2人にケイトは声をかける。
「今回は、俺も一緒にしてもいいかな?」
「もちろんなのじゃ!主も一緒にするのじゃ!」
ミステルトが嬉しそうにケイトに飛びついた。
体格差だけ見れば、一緒にこけてしまいそうだが、ステータスのおかげで受け止める事ができる。
その様子を微笑ましそうにレティシアは見守っている。
「ちょっと、私達も忘れないでよね」
「潮干狩りは初めてですが、頑張ります!」
「にゃー!頑張って大きな魚を掘るのにゃ!」
「魚は掘れないよ?」
「そうだよ、魚は釣るんだよ?」
「よ、よろしくお願いします」
追いついたアリッサ達も参加表明をした。
ウィンダムの勇者のキイとカリンは、この世界に残る事を選んだ。
向こうも楽しかったが、憧れの異世界を満喫したいそうだ。
「じゃあにゃん子は釣りに行くか?貝だけじゃ味気ないだろ?」
「こら、ユイト!にゃん子じゃなくてカルさんでしょ!」
ユイトの性格は少し捻くれているが、悪気はない。それを分かっているのか、カルは「にゃん子でもいいのにゃ!」と元気よく答えている。
「それよりも、ユイトは釣りができるのかにゃん?」
「分からんけど、ゲームでは達人だ!」
「達人にゃ!」
「何の自慢にもならないでしょう!」
リオはすっかりユイトのツッコミ役と化してしまっている。
「みんな元気がいいね!それじゃ今日は潮干狩り大会だよ!」
賑やかさに笑顔満開のレティシアが大きく宣言すると、ケイト達はみんなで浜へと移動するのであった。
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