第74話 和平
翌日、国王達との話し合いは、予定調和の様な段取りで進んだ。
まず、前提として、どの国王達も魔王との戦争を望んでおらず、ドラゴンであるミステルトの話を全面的に信用する形で話し合いが行われたのだ。
勿論、それは国王の何名かによるケイトの人柄の事前情報があっての事である。
ケイトと五大大国は和解し、勇者達は任を解かれる事になる。
そして、話し合いの中で、一つの議題となったのが、アリッサ達やリオの将来であった。
アリッサ達としては、ケイトと共に行く事を望むが、国としては貴族の令嬢であり、学園の最優秀チームである。
しかし、この話はある追い風によって解決する事になる。
「アリッサちゃん、こうと決めたら逃しちゃダメよぉ。孫は早めに見せに来なさいねぇ」
「アリッサ嬢達のチームは早期卒業にしますのでウィンダム王立学園の卒業生にはなって頂けますか?」
ウィンダム女王マグノリアも、自身に使える七風花の2人の意見に頷いた。
「そうよな。魔王ケイトは国を作るのであろう? そうなれば我が国は繋がりができるか。それに、我が国の学園の卒業生が新しい国の騎士や妃として活躍するのは良き事」
マグノリアの妃や母シャディの孫と言った言葉にアリッサは顔を赤くしながらも、否定はしなかった。
「リオ殿、貴殿は元の世界に帰らなくても良いのだな」
「はい。私は、この世界で生きていきます」
この後、アスカが日本に帰る事は伝えてある。
他の勇者達も、ケイトは殺したのではなく、元の世界に返していた為のスピード解決であったのだから。
「なら、アクアリアが後ろ盾となろう。王の側にいるには、それなりの出自が必要になる」
ケイトが国を作るとして、ケイトの出自さえこの世界ではぼんやりしているのだが、建前というのは大事なのだろう。
「そうなると、五大大国はケイト殿とどこかで繋がりを持った方がいいのう」
「なら、俺が行こう」
エボルティア王の発言に、エボルティアの勇者ユイトが声を上げた。
「お主も帰らなくていいのか?」
「へ、ジジイ、俺はこの世界が楽しいんだ。望んでここに残る。しかも1から国を作りらだと?面白そうなイベントじゃねえか。なあ、同郷の男が1人くらいいた方が助かるだろ?」
ユイトはケイトにそう提案した。
ユイトはケイトに腕を折られ、戦った相手である。
しかし、ユイトにとって、平和な日本でない世界の事でやいやい言っても仕方ないし、別にケイトに恨みなど持っていない。
故に、これまでの様にただ冒険して強くなる旅よりも、1から国を作るのに参加した方が楽しそうだ。という感覚である。
この話は昨晩ケイトに、国を作るなら一枚噛ませろと話を通してある事だ。
この話を聞いて、焦ったのはアースランドとフレミュリアだ。
ケイトと繋がりのある人物はおらず、繋がりを築くにしても理解ある者をパッと出せずにいた。
「で、ではアースランドからは職人を出そう」
アースランドは職人が多い為、国づくりの役にたつであろうと、アースランド王はなんとか案をだした。
「それではフレミュリアからは……」
悩むフレミュリア王に助け舟を出したのはアリッサであった。
「フレミュリアの港町に、ケイトやミステルトさんに縁のある人が居ます。その人が望めば移住を許可してはいかがでしょう? それに、異世界人は海の幸が好きな様ですから、貿易の為、海産物に掛ける税の免除など喜びますよ」
フレミュリア王は、アリッサの提案に青い顔をした。
海産物にかける税の免除などとなれば、どうなる事か予測がつかない。
しかし、この騒動で、1番迷惑をかけたのはフレミュリアの迷惑勇者なのだ。頷かないわけにはいかなかった。
そうして、五大大国の支援を受ける形で、ケイトは小さな国を作る事になった。
五大大国の重なる、ペンタゴンの中心地がケイトの国土になる。
そして話は今回の話を、どうやって国民に理解してもらい納得させるか。
それは、国民の抱くイメージを書き換えてしまえばいい。
政治的な印象操作である。
全ての罪を被る生贄は偶然にも用意できているのだから。
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