第10話不満
ケイト達は自己紹介をした後、上級生で指導係のエリーゼとキースはケイト達に今後の指導内容についての説明をはじめた。
キースが淡々と指導方針を説明するのを遮って、エリーゼは我慢ならないと言った様子で話し始めた。
「どうやらこのチームにはこの編成に納得言ってない奴が居るみたいだな」
説明を中断されたキースはやれやれと言った様子で肩をすくめる。
エリーゼが不満か?といった風に目線をキースに向けると、キースはどうぞ。と言った風なジェスチャーで返した。
「エルサ、このチームの何が不満だ?」
エリーゼは不満たらたらでアリッサ以外のケイト達を睨んでいるエルサにそう質問した。
「不満?全てです。アリッサ様がこの様な者達と組むのも、私がこのチームにいるのも。
この者達はあまり物で、成績の悪い人達。
私が集めたチームの方が良かったに決まっている。貴族で固めた方が幼少期からの教育が行き届いて優秀なのですから」
「 確かに今の段階じゃ貴族の方が成績はいいだろうな。それだけか?」
「それだけって大きな問題でしょう。
私はアリッサ様がブリゼに入学したのもおかしいと思っていますが」
エリーゼは苦笑しながらアリッサにも話を振った。
「アリッサはどうだ?」
「そりゃ、小さい頃から英才教育を受ける貴族の方が優れているでしょうけど、私達は中等科に上がったばかりだし。
これからの成長では簡単にひっくり返るわよ。それに、貴族と言ってもブリゼの生徒なら、将来性のある平民の方が面白いわ」
面白い。アリッサはそう答えた。
「な、それはアリッサ様がブリゼなんかを選択されたからで____」
文句を言ったエルサの言葉は尻すぼみに小さくなっていった。
エルサの方を見るアリッサの笑ってない笑顔は破壊力満点の様だ。
「ブリゼでの生活はとても面白いわ。
貴族が集まるエクスプロズィなんかは考えの凝り固まったつまらない学園生活でしょうね。
エルサ、ブリゼの人間がシュトースを倒した記録もあるのよ?
それに、ケイトはとても面白いわ」
アリッサの話にギョッとなったのは矢面に立たされたケイトだった。
エルサの視線がとてもいたい。
「ククク。エルサ、もっと柔らかい思考をもて。君達はまだ中等科1年目、うかうかしてるとすぐ追い抜かされるぞ。私の様にな」
エリーゼはニコッと笑って隣に立つキースの肩に肘を置いて、なっ。とでも言う様にキースの方を向いた。
エリーゼは貴族出身、キースは平民である。
「このキースも一年時は成績不振者だったが、今では私の相棒だ」
「まあ、俺みたいな平民に言われるのは嫌かも知れないがな。
一年時の実力なんて簡単にひっくり返る。
ステータスを重視する見方もあるが、それだけでは測れない強さがある。
相性とかな。その時が来た時、凝り固まった頭だと損をするぞ?」
キースが先輩だからかエルサは反論を返さないが、不満たらたらな態度は変わらない。
「君達もエルサを見返せる様に強くならないとな」
この状況て話を振られて少女2人は硬い表情で苦笑いである。
「ま、まあさ、こうなってしまった以上後戻りできないんだし、プラス思考で考えないか?」
口を挟んだケイトをエルサは不満そうな目つきのままみる。
「この学園の意図はさ、人材発掘。優秀な生徒の確保が目的な訳だ。
おそらくだけど、アリッサみたいに貴族で優秀な人物がブリゼに混ざっているのは意図してブリゼに入ったからだと思うんだよ」
エルサの目力は強くなるが、ここで負ければチームはバラバラになり、この先の学園生活に影響が出るだろから負けてられない。
「俺やこの2人は今アリッサと君の2人のお手付きになった訳だ。エクスプロズィだと貴族間で切磋琢磨して成長はできるだろうが、それだけだ。
でも、貴族は民を扇動して導き、国を回す力が必要だ。
2人が俺達のリーダーになってチームが成長したした暁には君達貴族は個の力だけではなく貴族として成長するし、優秀な家臣が付いてくる事になる。そう考えたほうがんじゃないか?」
「おおお、お手付きだと!貴様、破廉恥な!」
ケイトはいい事を言ったのだが、言葉の選び方を間違えてエルサはそこに過剰な反応を示した。
「まあ、言葉のあやだ。エルサ、深い意味はないと思うぞ。
つまりケイトが言いたいのは平民の中に入った方が平民との絆を作りやすく、人材発掘に役立つ。それもまた、自分の家の力を強くする事にも繋がると言う事だ」
エリーゼがフォローしてくれたおかげでエルサは少し冷静さを取り戻した様だ。
「そんな上手い話が…」
「ない訳ない、とも言い切れないだろう?
国は貴族だけでは成り立たない。
だからこそ、アリッサはエクスプロズィではなくブリゼを選んだのだろう」
アリッサが選んだ道。それを全否定してしまう事をエルサはできない様で、完全には納得してはいない様だが、納得する事にしたようである。
「ならば、貴様達には意地でも成長してもらってアリッサ様の選択に間違いがなかった事を証明してもらうからな!」
しかし、アリッサの言葉は平民の少女達を余計に緊張させる。
「それじゃ、話は終わったな。 こっからは俺が話そう」
話を切り替える様に手をパンパンと叩いてキースは皆の注目を集めた。
「この話はお前達が成長した後の話だ。
今言い争っても何も解決しない。今日から中等科の本格指導が始まってお前達の実力は伸びていくだろう。
成長度合いによっては後期に学園ダンジョンにも連れていくつもりだ。
それまでは学園外のモンスターを狩に行くぞ。街道付近にはあまり強いモンスターは出ないし俺達もフォローするから大丈夫だ。
ただ、初等科の授業と違ってモンスターは予測不能な動きもする。連携してフォローしあわなければ街道付近のモンスターでも危ないとおもえ 」
「それでは行こうか!」
エリーゼの号令と共に街道まで移動する事になる。
この班初めての実践が始まろうとしていた。
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