学園編

第8話風の都

ウィンダム王国立ヴィント学園。

五大大国の一国、風のウィンダム王国が運営する学校である。

学校と行ってはいるが、学園都市といって差支えがないほどに広く広大な土地に建てられた学園施設である。

実力によって、ブリゼ、シュトース、エクスプロズィの3つの区分けがされており、それぞれ初等、中等、高等の校舎分けがされている。


首都ウィンダムに併設されており、ウィンダム城からみて右側が学園都市、左側が一般的な城下町と言う様に、半分が学園になっている程に教育に力を入れている国である。

学園都市の中には学生が不自由な生活をしない様に武具店などから生活雑貨まで色々な店があり、学園に通う生徒が自立して生活できる様に作られている。

因みに学園は全寮制であり、貴族平民関係なく寮生活を余儀なくされる為、貴族であろうと自立の為に学園都市で自立した生活をしている。


そんなヴィント学園に通う生徒の中にケイトの姿もあった。


ケイトが学園に来て2年と言う月日が経過していた。

初等科への入学は元の世界、日本の様に年齢で区切るのでは無く、必ず初等科からスタートする。

そして、初等科の2年間は、座学を中心にこの世界の常識や戦闘に関する基礎知識について学ぶ。

それは、この学園の最低入学年齢は10歳であり、まずはその2年で一般常識、基礎を叩き込まれる。

ケイトの様に、最低年齢以上の入学であっても、間違った知識や常識を矯正する期間として初等科から過ごす事になる。


五大大国はどこもこう言った学園の運営に力を入れている。

国の為に学園で教育を施し、優秀な人材は自国にスカウトして国力の増強をはかっている。

なので、常識を欠く生徒は本末転倒な存在であり、初等科の時点できっちりと一般常識を教育するのである。

勿論、例外も存在する。学園が用意する飛び級試験に合格すれば、中等科への飛び級も可能だ。



ケイトはこの世界に召喚された為、この世界について何も知らなかった。

だから飛び級など目指さずに初等科から勉強してきた。

ケイトは一応向こうで大学まで卒業していたので、年齢が違う同級生がいる事には慣れていた。

しかし、それは18歳から上の話であり、10歳と20歳が同じ初等科に通う風景は異様な光景だった。それも、2年すれば慣れてくるものだ。

ちなみに、女神に13歳に若返ったと言われたケイトだが、10歳と申告して入学した。

中年のおっさんから13歳に若返ろうが、10歳に若返ろうがあまり変わりはない。

幸い、日本人は若く見られるとは本当の事で、同級生の10歳と並んでも違和感はなかった。

そもそも、人族以外の多種族が通うこの学園、しかも入学年齢はバラバラなのだから、3歳くらい誰も気にはしない。

しかし、異世界人のケイトは、初等科に途中から入ると言う感覚に気持ち悪さを覚えてサバを読む事にしたのだが、2年も経つと、その意味のない行為をした自分に馬鹿馬鹿しさも覚えた。



朝の修練場に、カツカツと木がぶつかり合う音が聞こえる。

修練場では、少年少女達が木剣で剣術の稽古をしており、その中にはケイトの姿もあった。


「今日も私の勝ちね! でも、ケイトもやる様になったわね」


笑顔で勝ち誇る少女にケイトは悔しそうに相槌をうった。

少女が言う様に、初めは一方的で、練習にもならなかった。

同い年位の少年少女だろうと、ステータスの差があり、少女は剣術スキルを持っていた。

剣術スキルを持たないケイトが敵わないのは当たり前であったし、少女のステータスは一般よりも高く、歳上の同級生に勝るほどだった。

ケイトが少しはマシに戦える様になったのは剣術スキルをこの2年で覚えたからであるが、ステータスの差で、いつもまでも少女に敵わないでいた。

勿論時魔法を使えば話は変わるだろうが、それをケイトは望んでいなかった。



LV12


HP/E

MP/S


物攻/E

魔攻/S

物防/E

魔防/E

運/E


称号

異世界人


スキル

《時魔法》《鑑定》《収納》《剣術》《弓術》


というのがケイトのステータスである。

スキルを身につけたし、あの時のゴブリンのおかげでレベルは上がっているが、ステータスに変化はない。

思うに、このステータスの英語は変化しないのではないかと思う。

授業では、このステータスが低くとも強い偉人が登場した。

なので、これは成長率で、裏で表示されないステータスが上がってるのではないかと思っている。


「次こそは負けないからね」


「その言葉何回目よ。いつでも受けてあげるわ、やってみなさい」


10歳と言う年齢にサバを読んで良かったと思う所は、子供っぽく何回この少女、アリッサに挑んでも負けず嫌いの子供で通せることだ。

元のおっさんの姿なら大人の体裁を気にして悔しがる事も躊躇したかもしれない。


さて、それはそうと今日から中等科に上がって本格的な戦闘技術など新しい授業が始まる。

周りの少年少女達も朝の訓練を切り上げ始め、登校の準備を始める。


ケイトも、アリッサに手を差し出され起こされると、登校の準備の為に寮へと戻るのだった。

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