神代の魔法使い
鬼龍院刹那
第1話 プロローグ
この作品は全てフィクションです。
実在の人物・団体・事件とは一切関係がありません。
これが戦略級魔術と言われる所以か・・・
新宿の10階建てマンションの屋上から見下ろす地上はホラー映画の光景そのままの地獄絵図だった。人が人を襲い食い殺していく。そして死んだ人間はボロボロの姿で生き返ったように立ち上がり、今度は襲う側の化け物になる。化け物たちは生きた人間を追いかけ回し、取り囲み、食いちぎり仲間を増やしていった。
ゾンビ達から逃げる際に乗った車は信号やビルの壁に激突し、ドローンタクシーが眼前で高層マンションの中層階に突っ込んだ。
「ゾンビ映画そのままだな」
惨状はみるみる広まっている。数千どころか数万単位の被害になるだろうと男は思った。
「この魔術...ザンビーが打ち込まれた場所を探さなければ...」
人間を生きた死体ゾンビに変える魔術『ザンビー』の発する微弱な魔力を探る。凄まじい破壊力があるような戦略級魔術ではない。被害は非常に広範囲に亘る術だが魔術としては比較的簡単な術であり少ない魔力で発動することができる。だが魔術を知らない相手には凄まじい威力がある術とも言えるが、魔術に対する知識と実践がある相手にはほとんど効果がないことが特徴の術だ。
奴らはなぜ地上の人々に対してこのような魔術を放ったのか。魔術、魔法の知識がない敵に対して経済、インフラを崩壊させ戦闘継続不可能にするためには有効な術であるのは確かだが、理由がわからない。しかも日本だけでなく米国、中国、イギリス、フランス、ロシア、インド、カナダ、ブラジル、ドイツ、その他多数の国で同時多発的に発生していた。
術が短時間で広範囲に広がる場所に見当をつけて探した方が早いと考え、男は微弱な魔力を探すのをやめた。
「何をしようとしているんだ...」
男の目の前の空間が揺らいだように見えた直後に闇のような裂け目ができると男はその中に消えていった。ゾンビたちの発する音と逃げ惑う人間の叫び声が、こびりついた汚れのようにいつまでも周囲に響いていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます