Andante

25/25

 呆れたような苦笑まじりに「どうせ帰ってくると思ったよ」と言われた瞬間、あの日の僕に沸いた奇妙な感覚を今でも覚えている。

 今思えばそれは腐れ縁で、恋愛と呼ぶには幼すぎる情動だ。成り立っていたのは相手の方を向いていなかったからで、歳を重ねると共にすれ違っていく。それをなんとか繋ぎ止めていたのは、僕が相手に向ける執着だった。

 実らない果実が初恋なら、半端に実った“それ”は呪いだ。枯れもせず、腐りもしないから、甘い香りに囚われ続けてしまった。


 だから、僕は初恋の終わらせ方を知らない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る