Andante

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 呆れたような苦笑まじりに「どうせ帰ってくると思ったよ」と言われた瞬間、あの日の僕に沸いた奇妙な感覚を今でも覚えている。

 今思えばそれは腐れ縁で、恋愛と呼ぶには幼すぎる情動だ。成り立っていたのは相手の方を向いていなかったからで、歳を重ねると共にすれ違っていく。それをなんとか繋ぎ止めていたのは、僕が相手に向ける執着だった。

 実らない果実が初恋なら、半端に実った“それ”は呪いだ。枯れもせず、腐りもしないから、甘い香りに囚われ続けてしまった。


 だから、僕は初恋の終わらせ方を知らない。

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