ぽんこつ商人の異世界輸入〜なにか分からないですが、売っちゃえ!で億万長者!?〜
夕目 ぐれ
0日目 黄金の実は人生の始まり!?です!
「はぁーー。……暇です」
ここは、村外れにひっそりと佇む小さなお店です。色々な珍しい物がいっぱい置いていますよ!
「……例えば、これは世にも珍しい幸福のお花! 普通は葉っぱが三枚なのに、これはなんと……五枚! 今ならお買い得の40マニーです! お買い得…………、ですよー…………」
静かな店内に、わたしの声だけが響いて、とても虚しいです。
そう言えば、最近お客様は来ましたっけ?
「はぁ……。本当に暇です」
毎日、机に突っ伏しては溜め息を溢す日々です。外に出掛ける気も起きません。
まぁ、そんな余裕がない、ということもありますけど……。
カランコロン、とお店の来客を知らせるベルが鳴り、わたしは慌てて立ち上がります。
「い、いらっひゃいまへ!」
突然のことで噛みまくるわたし。
恥ずかしさで顔が熱いです!
「あれ? イナベルさん。どうされました?」
イナベルさんは、このお店の持ち主の方で、お店を開きたいわたしに
「……あんた、今月の家賃はどうしたんだい?」
何やら顔が怖いイナベルさん。
いつもこんな怖い顔してる方ではないのですよ。わたしと話す時以外は……。
「えっと……、ちょっとまだ……。もうすぐですね、このお店も大繁盛して、売り上げがわーい、になりますから……」
「…………」
ひーー! イナベルさんが無言で睨み付けてきます。
「そもそも、ここは何のお店だい? 置いてあるのは、ガラクタばかりじゃないかい」
ガラクタって……、それは心外です!
わたしが日々、拾い集めてきた宝物なんですよ!
「分かる人には分かります! ここにある子たちの価値が!」
「……で、一つでも売れたのかい?」
わたしはそっと、明後日の方向を見ます。
あっ、あそこに
「…………ネルネさん?」
う〜〜。前から何かすごい圧が!
経験者のわたしは知っています。わたし、とても怖い顔で怒られる寸前です。
あ、そう言えば。すっかりと忘れていました!
「イナベルさん! 一つ売れました!」
あれはこのお店を開いて直ぐの時です。
黒いロープを頭から被った怪しいおじさん(いえ、とても素敵なお客様)が、わたしがとあるお店のゴミ箱の中から見つけた小さなベル(因みに音は鳴りませんよ!)を買ってくれたのです!
「…………そうですか。でしたら、ネルネさん。今日の所はその売り上げの折半で許しましょう」
なんて寛大なお方!
わたしには神様のように見えます!
「少しお待ち下さいね! えっと、確かここに……」
わたしは急いで、カウンターの戸棚の中を探ります。
何か色々とゴミ……ではないですよ、大事な商品がいっぱいで……。
「…………あっ」
「ネルネさん?」
……思い出しました。
わたしはその怪しいおじさんに商品を渡す際、お嬢さんに良い物があると、それをなんと無料で頂いて。
えっと、その後は……、それをうっとりと眺めて。
あれ? わたし、お金頂いて……ない?
「あ、後で……、イナベルさんのお家までお届けに伺いますね」
「……ネルネさん。私は貴方にここを無償で差し上げた訳ではありませんよ」
「……はい」
「貴方はまだ子供で、とても苦労なさっているそうなので、大目に見ていますが。こんなこと、大人なら二度と許されないことを心に留めていなさい」
「…………はい、すみませんでした」
「もう、次はありませんよ。ネルネさん」
そう言って、イナベルさんは怒りながらお店を出て行ってしまいました。
こうやってお店を持ってまだ三ヶ月ぐらいでしょうか。
イナベルさんには毎回怒られていますが、流石にもうそろそろ駄目かもしれません。
「どうしましょう……」
お父さん、お母さん。
生きていくのは、とても大変なのですね。
ぐぅー、とお腹の音がお店に響き渡ります。
このお店は、わたしの溜め息かお腹の音しか聞こえません。
「これも全部、あの怪しい、ゴミを漁ってそうなおじさんやろうのせいです」
え? お金をちゃんと受け取らなかったわたしが悪いですか?
そんな誰かの声が聞こえる気がします。
でも、とわたしはカウンターの奥から、そのゴミくそやろうから頂いた物を取り出します。
それは、黄金に輝く何かの実。
「こんなものを無料でくれると言われたら……、普通忘れるじゃないですか」
そんな言い訳を、独りぼっちで誰かに呟きます。
「……いえ、むしろ。あのベルがこの黄金に変わったと言うべきですよ、私。これは得した、というやつです」
うん! とわたしは一人で納得します。
そして、ぐぅ〜ととても情けない音が、わたしのお腹から。
「…………」
わたしは黄金の実を見つめます。特に他意はありませんよ。ただ見ているだけですから。
「……………………」
ぐぅー、とお腹の音が鳴り止みません。
あくまでも確認ですが、これって、食べれるのでしょうか?
感触は少し柔らかさもありますし、彫刻みたいな作り物ではなさそうです。
匂いは……、無臭です。
「……少し」
そう呟きつつもわたしの賢明な頭脳は、もしかしたらこれは本物の黄金かもしれませんと。
これを売ればたくさんのお金で…………、何か美味しいものを食べれる! と言っています。
がぶっ、とわたしはいつの間にか、その黄金の実を口にしていました。
「……何も、味がしません」
取り敢えずわたしは無の境地で、このゴミを渡してきたあの、ゴミ拾いくそばか……えーあほあほおじさんのことなんかちっとも考えずに食べてしまいます。
味がしないと、お腹が満たされた気がしませんね。
取り敢えず、今日はもう寝ちゃいましょう。
***
「……こらー! 小娘め! 誰がゴミ拾いくそばかあほあほおじさんじゃ!」
「え?」
わたしはいつの間にか、真っ白な空間にいます。
と言いますか、浮いてる? すごい! 楽しいです、この浮遊感!
「こらー! わしの話を聞けぇー!!」
「うわっ!? 誰ですか?」
目の前に知らないおじさんがいます。
目も鼻も口も身体も真っ黒の不審者です!
「わしは怪しい者ではない」
「……怪しさしかありませんよ」
「取り敢えずじゃ。もうこのプロローグを長くやり過ぎたので、手短に行くぞ」
「声はもう少し若くできないのですか?」
「とある者からの頼みで、お主にスキルを渡すことになったのじゃ。よくある展開じゃろう?」
「すごいです! 触れれません。手が貫通します」
「……こ、この世界に偶に持つ者がおるという素晴らしい力。お主にも特別に授けようぞ」
「鼻の穴はここらへんですか?」
「……人の、人の身体をつんつんするなぁー!」
うわぁ! なんか頭っぽい部分が大っきく開きました。怖いです。
「もう良い。もう授けた。後は好きにするが良い」
そう言うと、謎の真っ黒おじさんが消えていきました。
***
「ふぁ……。何か変な夢を見ました」
ベットから起き上がると、わたしの視界に何か文字が宙に写っています。
「何ですか? これは……。えっと、にほんあきはばら……行き?」
そこに手を伸ばすと、その文字が光り出しました。そして———
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