第56話 案内と誕生と夢
次の日
「う~~~~ん」
「何をやっているんですか?」
「何もやっていなんだよなぁ~」
「店長とクロカラさんが話し終わるのを待っているんですよね?」
そう。今日はクロカラさんに王都を覚えてもらおうと案内してまわっている。その途中でコーエンの店に来た時にからくりの材料が買えるのかどうか。どういう鉱物がからくりに必要なのかどうかを説明するために、コーエンとクロカラさんが裏で長い間話している。
「そう。クロカラさんはこっちに来たばかりだから王都を案内しているんだ。だからここを離れる訳にはいかないし。けどここでただ座っているだけなのは暇だし」
「飲み物は出しませんよ。ここは鉱石商なので」
「そうだよね。…ミルドさんは学園での最後の1年はどんな感じで過ごしたの?」
「普通に授業を一緒に取ってた友達と遊んだり喋ったり…。勉強もちゃんとやっていましたよ」
そんな話をしていると…
「ミルドさん。鉱石を分け終わりました。見てください」
「店長に見てもら…、いや、私が後で見るから」
「分かりました。少し休んでいいですか」
「いいですよ」
「新しく入った人?」
「そう。店が少し大きくなったから私と店長だけじゃ人が足りなくなって…」
「お待たせしました」「待たせたな」
とコーエンとクロカラさんが奥から出てきた。
「長かったでしょうか?」
「まぁ、暇になるぐらいには…」
「それはすみません。交渉をしていたもので…」
「交渉?」
「はい。コーエン様にからくりを作る為の鉱石を用意してもらう様に頼みました。コーエン様から、その代わり何か役に立つからくりをくれと言われたので洞窟の中でも光り、人に付いていくからくりを主人が用意することになりました」
「本当?コーエンの方がそれ大変じゃない?」
「まぁ、大変だ。新しく見つけなきゃいけないが商品が増えるのはこっちにとっても得。それにからくりという報酬が貰えるならやるさ。手入れだってしてくれるんだろう?」
「はい。では再び案内をよろしくお願いします」
その後、コーエンの店を出た後は王都の中心街や鍛冶屋が多く並ぶ通りやギルドなんかにも案内し、最後に王都に入ったり出たりするための許可書を門で発行してもらった。
「それさえあれば王都に入ったり出たりできるから」
「分かりました。少し慣れたいので1人で王都を
「ウミラは?」
「いいよと言っています」
「分かった。僕のことは気にしなくていいから気が済んだら勝手に帰って」
「分かりました」
====
「無いですか?」
「少なくともないのぅ。うちでは見たこともない」
「分かりました。ありがとうございます」
俺たちはクロカラさんと別れた後、何をしているのかと言うと…
「(無いね。他の国の歴史が載っている本は…)」
それに鍛冶についての本もやっぱり無いな。アキリーナたちと同じく、鍛冶屋に聞きに行くか?
「(それをやるんだったら鍛冶屋を雇った方が早くない?)」
そうだよな。
「あれ?クリットさん?」
うん?
クリットが声の聞こえた方に顔を向けると
「サリナリ?なんでここに?」
「ここは私の行きつけの本屋なんですよ。おじいさん!頼んでいたものはありますか?」
「サリナリちゃん、まだ届かないんじゃ。もうちょっと待っておくれ。」
「そうですか…。17日後までには届きますよね?」
「もちろん。その日までには間に合うはずじゃ」
「それなら大丈夫です。少し本を見ていきますね」
「盗ったり汚さなかったら良いぞ」
「もちろん!そんなことはしません!」
「17日後ってなんかあるのかな?」
「あれ?知らないのですか?その1日後はアキリーナさんの誕生日ですよ」
「え?本当?」
「はい。24日がアキリーナさんの誕生日で…今日が1年が始まって6日目なので…18日後がアキリーナさんの誕生日です」
「(知ってた?)」
いや?知らん。
「その様子だと知らなかったみたいですね。まぁ、後17日あるのでまだ間に合いますよ」
「ちなみにサリナリは本を贈り物として送るのか?」
「はい。少し珍しい本なので取り寄せなきゃいけなかったんです」
「へぇ。僕はどうしようかな?」
「お菓子とかはどうですか?それか思い切って何も送らないとか…」
「それはいいのかな?」
「アキリーナさんは貴族ですから下手な物を送るよりはいいと思います。お祝いの気持ちを文字で伝えるのもいいかもしれません」
「じゃあ、そうしようかな」
それこそ商品ならサリナリの珍しい本ぐらい手に入りにくい物じゃないと見合わないから、ただ誕生会に参加してその時に「おめでとう」と言うだけでもいいんじゃないか?
「ちなみにその量の本を買うの?」
アキリーナの誕生日について話している間もサリナリは本を棚から選び、それらをクリットの身長よりも高く積み重ねて持っていた。
「いえ、ここの本屋は店の中では自由に本を使うことが出来るので。流石にこの量の本を買うお金はありません」
「へぇ、勉強するの?」
「はい。国家魔導師になるための試験を受けるのでさらに勉強しないと」
「国家魔導師を目指しているんだね」
「はい。昔からの夢なので…」
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