第315話 幼女誘拐事件
『『『ありがとううございましたー』』』
?
「おっと失礼。気が付かなかったよ。お互いに気を付けよう」
なんだコイツ……。
放課後、ミアさんのお店に来たんだけど、ドアが開くまで店から出てきた男に気が付かなかったのだ。
「はい……。すいません……でした……」
いや、今もだ。
目の前にいるのに【気配察知】にほとんど反応しない。
透明な気配が動ている感じ……、気配の色が見えないのだ。
「春樹、気を付けろよ?千葉にも人が増えてきてるんだからさ」
「どうしたの?今の知り合い?」
少し後ろを歩いていた総司と相川が男の後ろ姿を見続ける俺に声を掛ける。
「いや……」
でも、どこかで見たような……。
「今の人、絶対そうだって……、あ、みんなお帰り」
「ちょっとヒナやめなって……、おかえりなさい」
不良娘と吸血娘に出迎えられる。
不良娘は大分元気になったね。
一時期はダンジョン内では殆ど喋らなかったからね。
雨宮先生がどうやったのか、今では前と同じくらい元気になった。
雨宮先生と言えば、この前の病院襲撃事件が解決したので報告しておく。
まず、梅本さんの治療が終了した。
これは千葉ダンジョンに神社を作っていた【巫術士】の女性が梅本さんの左手に刻まれていた呪いを解いてくれたからだ。
これにより梅本さんはほぼ完治。
治療の必要も無くなったので、冬海さんは本部のビルに居を移すそうなのだ。
したがって千葉支部にも来れなくなる。
月に一度、梅本さんの診察があるからその時は来るかもしれないとは言ってたけどね。
雨宮先生は、優秀な
患者の病気が治って残念そうにするのはどうかと思いますね。
そんな訳で白石さんと林さんの懸念は消えて、見事に問題解決ですね。
【巫術士】さんに感謝を。
今度は【巫術士】さんにお客を取られるかもしれないけどね。
「ちょっと夏希、聞いてよ。今のお客さんさ。店長がいるときは何十万も買い物して行くのにさー。店長がいないと何も買わないで帰るんだよね」
「へー、常連さんなんだ」
なるほど怪しかったけど、ミアさんのファンの人だったか。
「あの人、絶対ロ〇コンだよ」
言い方!
不良娘は元気になり過ぎですね。
「こーら。ヒナちゃん、お客さんの悪口はダメよ。あら、みんなおかえりなさい。常連さんが置いていったお土産食べる?地方のダンジョンに行ってらしたんですって」
奥からミアママさんが出てきた。
手にはお菓子をあけたお皿だ。
「ママさんは騙されてますよ。お菓子で大事な娘さんを売るつもりですか?それにあの人、パパさんがいる時は絶対来ないんですから」
「パパが辛く当たるから、こっちからお願いしてパパがいる時には来ないようにしてもらってるのよ」
パパは俺にも辛く当たるんですが?
〇リコンと一緒にされても困る。
「そう言えばミアさんはいないんですか?」
当の本人がいないね。
この後、ミアさんのレベル上げの予定なんだけど……。
「そうなのよ。あの子ったら折角カモ……常連さんが来てくれてたのに、どこほっつき歩いてるのかしら?もう帰ってきてもいい時間のはずなのにねぇ。ハル君たちとも約束があったんでしょう?ごめんなさいね」
「ああ、外は結構な人だかりが出来てたから、ミアさんもあの中にいたのかもしれないですね」
平松さんが『ブルーオーシャン』の古田幸也を倒した動画が拡散されて、今日は挑戦者が絶えないらしい。
まさか霞さん目当じゃなくて平松さん目当で人が集まってるとはね。
裏の駐車場でやってるから俺は直接見てないけど、相川の言う通りミアさんもそこにいるかもしれない。
まあ先に俺達だけで投石用のゴーレムを集めててもいいだろう。
『大変大変大変っすーー。いないっすかー!』
お?この気配は……。
新人ちゃんが大騒ぎしながら店に向かってきてる。
「あれ?新人ちゃん、ダンジョンに入っていいの?」
「緊急事態っす!フォーメーションZっす!伝えてくるように頼まれたっす!……ところでフォーメーションZってなんすか?」
Zは『剣聖ちゃん』だ。
『剣聖ちゃん』が千葉支部に来たらしい。
「うわー。昨日の今日で?敵討ちかな?」
ならいいけどね。
また霞さんを勧誘しに来たのかもしれない。
『ブルーオーシャン』は大々的にサポートメンバーを募集し始めたし、昨日古田幸也が来たのも霞さんを訪ねてだった。
「今日も中止っぽいな。じゃあ買い物行くか。晩御飯は俺が作るって白石さんに伝えておいてくれ」
「んー。じゃあ俺は倉庫に隠れてるから、『剣聖ちゃん』が帰ったら起こして」
「あ、総司がご飯作ってくれるの?やったー。でも隠れるって何?フォーメーションZってなんなの?」
「何すか?」
いや、吸血娘はともかく、新人ちゃんは知ってないとダメでしょ……。
林さんは何を教えてるんだ?
︙
︙
「っ!?」
一方的にやられた……。
いや、しばらくは持ったんだけど、一人も倒せなかった。
倒したと思ったら空だったんだよ……。
これ、自分が強くなると向こうも強くなるのか?
なんというクソゲー!
火球は降ってくるし、黒鎧も出てくるし、すぐに倒せないとどんどん増えていく感じなのか?
せめてこっちにも防具をですね……。
「また浮気ですか?」
「イデデデッ」
起きたら目の前に霞さん。
グイーッと俺の頬を引っ張る霞さんだが、その頬は引っ張られた俺よりも膨れている。
またご機嫌斜めですね。
しかし俺の方は一度も浮気なんかしたことないはずだし、倉庫で寝ていただけなので完全に冤罪ですね。
昨日の新ダンジョンの第二陣の募集の仕方にご立腹だったし、今日は『剣聖ちゃん』が来る前から落ち込んだ様子だったから、そっちが原因だったと思っておこう。
「お仕置きが必要ですね。競技用なぎなたは……、ミアさんのお店に移動してしまいましたか。行きますよ?大丈夫、今日はちゃんと手加減するのでこの前のような失態はしません」
レベル上げに不要なものは全部ミアさんのお店の方に置かせてもらっている。
なので俺の十文字槍を模した木の棒もミアさんのお店だ。
え?この状態のまま移動するんですか?
イデデデッ。
︙
︙
「で?白石さんはどうしたんですか?」
ミアさんのお店に来たら床に白石さんが転がっている。
目は開いているので起きてはいるようだ。
「よくわからないけど、ギャンブルで負けたみたいなのよ」
ミアママさんが答える。
総司と相川どころかミアさんも帰って来てないね。
あんまり時間は経ってないようだ。
しかし霞さんも白石さんもここにいるってことは受付は空なんじゃないか?
「心を入れ替えてギャンブルはやめたはずでは?白石さん、どういうことです?」
霞さんが寝ている白石さんに尋ねる。
あー、【悪女】を目指すって言ったきりだったからね。
悪い癖が再発したようだ。
「違うのよー。絶対に負けない勝負だったはずなのよー。あと一人で大勝ちだったの。あと一人で10人抜きだったのに、そこに横から『剣聖ちゃん』が現れて負けちゃったのよー」
「あれ?平松さん負けたんですか?」
10人抜きということは、駐車場で戦っていた平松さんだろう。
10人も平松さんを抜いては来れないだろうし、霞さんということはないはずだ。
「まさか地上で賭け事をしたんですが?信じられませんね。今日という今日は吐いてもらいますよ。胴元は誰です?さあ、言いなさい!」
霞さんが白石さんを無理矢理立たせる。
ダンジョンは治外法権、賭け事も許される?
いやいや、地上でもダンジョン内でも賭け事はダメだと思います。
「うぅ。ごめんね、ミキちゃん、ヒナちゃん。給料日まではもやしのスープで我慢して頂戴。おねえさんもパフェを我慢するから……」
「まさか子供達の食費にまで手を付けたんですか!?……言葉もありませんね」
これは擁護できませんね。
真の【悪女】じゃないですか……。
「違うのよー。この子たちに毎日ステーキを食べさせてあげられると思ったのよー。まさか『剣聖ちゃん』が現れるなんて思わないでしょう?全部負けた平松さんが悪いのよー」
それにしても『剣聖ちゃん』は地上でもそんなに強いのか……。
槍と剣だよね?
どうやって勝ったんだ?
「人のせいにしないでください!いいでしょう、お金を稼げるようにしてあげます。春樹さん準備をしてください。今すぐこの人を……」
「わわ、渡辺さん、落ち着いてください。私達、食費ちゃんと払ってないですよね?これからはちゃんと私達が出しますからまずは落ち着いて、下ろしてあげてください」
首根っこを掴まれて持ち上げられた白石さんに吸血娘が縋りついて下ろそうとする。
中々に慕われているようですね。
確かにお金が白石さんのポケットから出ているなら問題ないんだけど……。
いや、あるか?
『大変大変大変っすーー!大変なんすー!』
おや?
また新人ちゃんが飛び込んできた。
「何事です?あの小娘が戻ってきましたか?」
今度はフォーメーション何だろ?
「それどころじゃないっすー!緊急事態っす!ロリ鍛冶士が攫われたっすー!」
ロリ鍛冶士?
え?
ミアさん?
ほげーーーっ!!
――――――――――
すみません、新作の方の再生数が想像以上に伸びないのでここでも宣伝させてください^^;
タイトル:『します、させます、させません』(仮)
https://kakuyomu.jp/works/16818093074397292324
『ただの人』と同じく現代ダンジョン物となっております。
【時間遡行】でタイムリープして無双する感じの作品です。
こちらと同じく毎日0時更新(予定)で頑張ってます。
現在10話まで投稿中。
カドカワBOOKSファンタジー長編コンテストに応募中なので、レビュー、応援、フォロー頂けると助かりますm(_ _)m
もちろんコメントも大募集中です!
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