第6話 スキル覚醒
「なーんか通行人が俺のことをチラチラ見てたけど、そういうことか!!」
「それが原因だねーアタシ達、それなりに有名な配信者だから……オトプロって知らない?」
「知らない……」
「この反応……普段からあんまりSNSとか見てなさそう」
「見てない……」
「じゃあ知らないのも無理ないか」
画面をスワイプさせると、彼女達の配信チャンネルが現れた。
登録者……140万人!?
超大手じゃん、やばぁ。
「くふふ、びっくりした?」
「あ、あぁ……」
「元の影響力とSランクモンスターをソロ撃破した衝撃。それらが合わさってとんでもないバズを生み出してる」
「なるほどなぁ……」
話題性の塊だった、というわけか。
ダンジョン配信に疎い俺でもそれくらいはわかる。
なんだか大事になってきたなぁ……
「あ、そうだ……これ渡さないと」
「ん?」
「これって……」
「カオスドラゴン? の魔石と素材だよ。横取りしたみたいになったから返すよ」
「「え?」」
俺がカバンから取り出した魔石と素材にギョッと驚く二人。
「いやいや……アタシたち全くダメージ与えてないし、倒したのは無名くんだし」
「真白たちが貰う方がおかしい……」
「そういうものなのか?」
二人とも受け取れない、と手のひらをこちらに向けて拒んでいる。
乱入したのは俺の方なのにな……こっちが困惑してしまう。
「ていうか売らなかったの? こっそり売っておけば、いくらでもごまかせたのに」
「え? 何でそんなことする必要があるんだ? まぁ……お金は欲しいけど、狡い事をしてまで稼ぎたいとは思わないし……」
「な、なるほど……?」
「落ちこぼれの俺はダンジョンで生活できるだけで満足だよ……それ以上を望むなんてバチ当たりもいいところだ」
「「……」」
あれ? 何かおかしいこと言った?
ダンジョン内で盗みを働いて素材を売るやつもいるらしいけど……俺は別にやりたいと思わない。
稼ぎは最低限あればいい。
重要なのは大好きなダンジョンに潜り続けられることだ。
「変わってるねー無名くん」
「こんな人初めて見た」
「はぁ……なるほど?」
そんなこと初めて言われたなぁ。
別におかしいことを言ったつもりはないんだけど……
「……そうだ。無名くんはスキルカードの更新をしてみたら?」
「スキルカードの更新? あぁ、そういえば一年以上してなかったなぁ」
「えーもったいない!! きっと何か変わってるよ!!」
「そうかなあ……じゃあ後でダンジョン協会に行かないと」
「その必要は無い。最近のスキルカードは魔力を込めるだけで更新される」
「はえー便利だ」
「何も知らないんだね無名くん……」
スキルの覚醒を信じてはいたが、正直ずっと結果は出なかった。
なので半分くらい諦めていたのだが……いい機会か。
「魔力を込めるって……こうか?」
「ん……それでいい」
「おおーなんか光出した」
取り出したスキルカードに魔力を込めると、カード全体から青白い光を放ち始めた。
これが更新かー……もっと最近の知識を入れるべきだな。
「さーてどうなるのかなーワクワク」
「どきどき」
「あんま期待すんなよ?」
とはいえ、仮にスキルが覚醒してもだ。
大したスキルではないだろうし、せいぜい一、二個何かが追加されるだけだろう。
「お、出た」
物事のハードルは低いに越したことはない。
半信半疑な俺のスキルカードに表示された結果は……
〜音梨無名の潜在スキル〜
【無属性・極】
推定ランク・S
パンパカパーン!!
おめでとう!!
【無属性使い】は【無属性・極】に覚醒したよ!!
今後もよい探索者ライフを!!
「……」
微妙にうぜぇお祝いと共にやべぇスキルが覚醒してた。
「おめでとー!! やっぱすごいねー!!」
「バグったかなぁ……協会に言って治さねえと」
「? 今のスキルカードは丈夫かつ正確。誤表示は99.9%しない」
「その残り0.1を引いたんだよ!! 違いねぇ!!」
推定Eランクだった潜在スキルがSランクになったんだぜ!?
嘘だと思った方が自然だろ!!
「故障じゃないと思うけどなぁ。だってカオスドラゴン倒してたし」
「いえす。覚醒した潜在スキルなら、無双できてもおかしくない」
「ううーん……」
確かにスキルカードが嘘をつくとは思えないしなぁ。
カードの偽造って最悪探索者としての資格を失うらしいし、偽の潜在スキルを出すとは到底思えない。
信じられない事実だが……
「とりあえずスキルの詳細を見るか……」
スキルカードを手に強く念じ、詳細な文章を表示させる。
【無属性・極】
無属性魔法が強化され、当てる度に固定ダメージを発生させる。
また、全ての無属性魔法を習得&覚醒させることができ、それらを組み合わせて新たな魔法を創造することも可能。
「「「ぶっ壊れだ……」」」
タイミングを合わせたわけじゃないのに声が重なる。
本当に無属性魔法を極めたスキルって感じだな。
火力が高い上に拡張性も半端じゃない。
やりようによっては何でもできる、そんな代物を覚醒させてしまったのか。
「あ……」
「真白? 何かわかったのか?」
「カオスドラゴンを倒せた理由」
「え?」
「何々!? 教えて教えて!!」
「姉さん落ち着いて……あんまり騒ぐと傷が開く」
傷ついた身体でれなは真白に近づき、尻尾をブンブン振っている。
元気だなぁ……
「Sランクモンスターは基本的に全属性耐性を持っている」
「あぁ……過酷な環境で生き延びて、あらゆる攻撃に耐えられる身体に成長したからだろ?」
「そう。だからSランクモンスター戦ではバフやデバフでステータスを変動させてから、集中的にジワジワ攻撃していくのがセオリー」
ニュースで見たことがある。
Aランクパーティーが十二時間以上かけてSランクモンスターを討伐している姿を。
陣形、攻撃や魔法のタイミング、相手の僅かな隙や自分たちの身体を休める時間など……
あらゆる部分を徹底的に計画し、ギリギリの戦闘を続けた結果、彼らは勝利を収めていた。
Sランクモンスターを一気に倒すなんて事はまずありえない。
それぐらいの強敵。それが常識の筈……
「真白ちゃんは詳しいねぇ……お姉ちゃんあんまりわかんないや」
「姉さんは学ぼうとしないだけ……で、仮にSランクモンスターがいる下層では無属性魔法を使う者がいないとしたら」
「え……」
「まさか……」
「うん」
真白の仮説に身震いする。
「上位モンスターには無属性への耐性が存在しない」
◇◇◇
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