第4話 どうやら俺はバズっているらしい

「えと、失礼します」


「あっ……」


「あ……」


 病院内に入ると、例の二人がベッドに横たわっていた。

 一応、俺が来ることは病院の人に言ってある。

 だが、俺の姿を見た二人は慌てたような様子で迎え入れる。


「その、昨日はありがとうございます……」


「真白も同じ……姉さんを助けてくれて……」


「あー別にいいよ。助けたのは俺のエゴみたいなもんだし」


 どう接すればいいかわからない、といった感じだな。

 わかるわかる。

 俺も助けた理由が美少女二人を見捨てられねえ!! という非常に下世話な理由だからね。


 正直、俺もめっちゃ気まずい。


「それで怪我の方はどうだ?」


「二、三日で退院できるって!! 骨折と大量出血で済んでよかったよー」


「最近の医者は高位の回復魔法が使えるから治療が早い」


「回復魔法で治るものばかりか、ならよかったよ」


 昔は完治に一ヶ月以上はかかる外傷が、今では魔法が発展したおかげで二、三日で治ってしまう。

 技術の進歩というのは恐ろしい。

 何にせよ、後遺症が残る心配がないのは安心だ。


「アタシは夢街れな、こっちは妹の真白ちゃん」


「音梨無名だ。はえー姉妹だったのか」


「こんな姿だから、意外に思うかもだけどね。アタシ達、双子姉妹なんだよー」


 よく見ると目の形や体型とか似ている気がする。

 髪の色はれなが金、真白が銀とはっきり分かれているけど。


 亜人姉妹……ということか。


(久しぶりに見たなぁ)


 二人の特徴的な部分を見る。


 れなは頭から鋭利な角を。

 背中の部分には悪魔のような羽を生やし、腰から細いしっぽを生やしている。


 真白は背中に天使のような翼があり、小さな羽をベッドや地面に落としていた。

 

 確か亜人化症候群、だっけ?

 魔力を得た人間によって産まれた子が、たまにモンスターの要素を身体に発現させてしまうっていう。

 

「あー……やっぱり角とか気になる?」


「っ!! あまり気分は良くなかったよな、すまない」


「大丈夫大丈夫!! 慣れてるから!! やっぱり珍しい?」


「俺の周りにはいなかったからな、本当にいるんだなぁって」


 不快な思いをさせてしまった……非常に申し訳ない。


「えっと……アタシ達のこと、なんとも思わないの?」


「なんとも……?」


「真白達は普通の子と違うよ?」


「あー……いや、可愛い子だなぁとしか」


「「ふむ……?」」


 何が言いたいのだろう……

 二人とも顔を見合わせて何か考えているし。

 姉妹特有のテレパシーか?。

 

「双子姉妹の亜人は珍しい。だから惹かれてしまうのも無理はない……えっち」


「そんな淫らな視線は送ってませんけど?」


 真剣に考えて損した。


 ポッじゃないんだよ顔を赤らめるな。

 別に胸を見てたわけじゃないし、俺は亜人の特徴的な部分しか……


 異性の身体を見てる時点でアウトだったわ。


「へー、やっぱり男の子なんだねぇ。病院内で発情してビンビンになっちゃってるのぉ?」


「急に積極的だなぁおい!?」


「でも嫌いじゃないでしょ?」


「……」


「素直だねぇ♡」


 姉は姉で俺に色気のこもった視線を向けながら、体をクネクネさせてやがる。


 何なんだこの姉妹!!


「ってそうだ!! なんでドラゴンと遭遇したんだ?」


「あー……それはね」


「風間ダンジョンを探索してた時、急にカオスドラゴンが現れて……」


「カオスドラゴン? あいつはそういう名前なのか」


 俺が知ってるのはB以下と一部のAランクモンスターくらいだ。

 実力的に俺の知らないAランクモンスターだったというわけか。

 

 なーんて予想してたんだけど


「無名くん知らなかったの? 下層ダンジョンでは有名なSランクモンスターだよ」


「S……ランク……?」


 はい?

 Sランク??

 あのドラゴンが???


「急だったから逃げられなくて。抗おうとしたんだけど、何もダメージを与えられなかった」


「一方的にやられた。物理も魔法も全部無効」


「やっぱSランクは違うよねー、全属性耐性だっけ? ちゃんとデバフとか攻撃を集中させないと倒せないらしいし」


「……」


 想像以上にやばいやつだった……


 え、仮にだよ。

 仮に夢街姉妹の言うことが本当だったとするじゃん?

 

 俺は無傷のSランクモンスターをソロで圧倒したってことになるよ。


「無名くんはすごいよね。さすがSランク」


「いや……」


「?」


「俺はただのBランクだぞ……?」


「「え?」」


 ありえないと言った顔を向ける二人。

 そうだよね、俺が一番おかしいと思ってるもん。


「理解不能……カオスドラゴンを一方的に倒せるなんて、Sランクでもかなり上位の探索者の筈」


「だ、だよね……レジェンド探索者ならソロでも倒せるらしいけど……え、無名くん何者なの」


「俺の方が驚いてるんだって。落ちこぼれの俺がSランクなんで倒せるわけないし……」


「落ちこぼれ? 潜在スキルでも悪かったの?」


「あぁ……俺の潜在スキルは【無属性使い】だ」


「「無属性使い……?」」


 信じてもらう為に、俺のスキルカードを二人に見せる。

 潜在スキルって公開しないのが常識らしいけど、俺のスキルなんてゴミだし見せたところで問題はない。

  

 姉妹はカードに記載されたの文字を一字一句、何度も読み返した後、俺の顔を再び見る。


「「なんで?」」


「さぁ?」


 なんでだろうなぁ。

 何か相性とか、理由でもあるのだろうか。


「後……無名くんには申し訳ないんだけど」


「ん?」


「昨日の出来事、どうやら配信に載ってたみたいなの」


「あぁ……そんなことか、大丈夫だよ」


 ちまたではダンジョン内で配信するという文化が最近流行っているらしい。

 俺はあまり見ないが、ダンジョン配信が今では世界中で人気なのだとか。


 まぁ、俺の姿なんて面白味も……

 

「昨日の配信、世界トレンド一位だけど大丈夫?」


「はい?」


 真白が見せてきたスマホには、数々のトレンド一覧が。

 

 ”カオスドラゴン”

 ”Sランクモンスター”

 ”謎の男”

 ”何者”

 ”Sランクワンパン”


 ……


「……まじかよ」


◇◇◇


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