第2話 乙女ゲームに転生しちゃってるじゃん
倒れている間に、夢を見た。ここじゃない国の女の子の夢。夢の中で私は、『ゲーム』という奴にめちゃくちゃハマってた。
私は自分の部屋で遊んでいる時に、ゲーム機を手放して、ベッドに寝転んで叫ぶ。
「あ~またクリアしちゃった! もう10周はしたし……新しいゲームやりたーい!」
「ねえねえ、じゃあさ、これやってよ」
部屋に遊びにきている友達が、ゲームソフトを一本私に渡してきた。パッケージには、『はぁれむ・ちゃんす!』といういかにも頭の悪そうなタイトルが書かれている。三人のイケメンのイラストと、女の子が一人描かれている。いわゆる乙女ゲームという奴だ。
ん? 乙女ゲームって何?
「私がこういうのやらないの知ってるでしょ……」
呆れた声を出したけど、友達はにこにこ笑っている。
「どうせ今やるゲームないんでしょ? いいじゃん、次のゲーム買うまでの繋ぎでやってみてよ! すっごいかっこいいんだよ、もうキュンキュンしちゃうんだから!」
「ええ……」
「お願~い!」
友達が言うから、私は仕方なくそのゲームを始めた。
物語の冒頭は、蔑まれていた子爵家の令嬢が、光属性の力に目覚め、聖女として認定されるところから始まる。そこから魔法学校に通うようになり、学園生活を通して攻略対象を次々と落とし、物語のラストには逆ハーレムを形成するのがノーマルエンドという奴らしい。
なんだそのノーマルエンド。逆ハーレムがノーマルっておかしくない? 逆にトゥルーエンドは何なんだ。
数日でクリアをした私は、その日も遊びに来ていた友達に叫ぶ。
「いや、待って! これ最低じゃん!?」
「最高じゃん! イケメンに囲まれてウッハウハだよ!」
「いやどこが!?」
それぞれの攻略対象には、婚約者か恋仲の幼馴染がいた。それなのに主人公に惚れて相手の女の子たちは捨てられ、順番に闇落ちして魔物と化した彼女たちを倒すことでヒロインは攻略対象をゲットするのだ。
控えめに言って、ヒロインも攻略対象もクソでは……? 何で男は浮気してんだ、何でヒロインは泥棒猫してんだ? うおおお、ムリィ!
「まあ、現実じゃあり得ないけどさあ。でもこのクレアちゃんがイケメンたちに溺愛されるの最高じゃぁん」
「いやいやいやいや……」
大げさに手を振った所で、夢が暗転して遠のいた。
そこで私は気付く。あれは、夢じゃない。私の過去だ。ゲームの主人公の名前は、クレア・バートン。子爵家の娘。光属性持ちの聖女。つまり、私。
うん……乙女ゲームの世界に転生しちゃってるな、これ!?
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