第23話 数打てば当たる、きっと
さて、後は動画編集の仕方を勉強して作っていくだけだ。素晴らしいことに高校入学時に買ってもらったPCがある。後は自分のセンスが問われるだけである。
「コマ割りをたくさん作っていく感じなんだな…… ただ、言っても背景はずっと同じで文字を切り替えるだけだからそれほど大変ではないか。背景画像だけ何パターンか下井草に作ってもらうか」
背景画像(水咲ネネが映っているもの)に関しては喜怒哀楽の4パターンがあれば成立するだろう。下井草に作成をお願いするメッセージを送り、構成の検討を続ける。「まず手書きで全体構成を作っておくと動画作成が楽」と本に書いてあったのでとにかく手書きで作ってみる。音楽のテンションと合わせて明るい話と暗い話を並べて、テンションを変えて…… ノートに書き連ねているとなんとなく見えてきた。
数日後、下井草から届いた4枚の背景をベースにいざ動画作成を始める。動画編集ソフトは奮発して有料のものを購入したが、これが使いやすい。直感的にわかるようになっていて素人でも困らない。
「音楽を差し込んで、背景を入れて、後は文字か」
俺は夢中になって作業を進めていく。ベースができあがれば後は高木に音声を作ってもらうだけだ。
『今動画を送るから、これに合わせて文字を読み上げてくれないか? その音声データだけもらえると助かる!』
『了解、録音してみるね』
高木の良いところはとにかく行動が早いところだ。レスポンスも早いので、無駄な時間が少ないのがいい。今回も数時間で録音データが届く。世間一般のイメージではVtuberは社会不適合者で、連絡も返さないとんでもない人が多いという印象があるが……こと高木に限ってはそんな要素が全くないのは助かる限りだ。
『送ったよ。これでいい?』
とりあえず動画に音声を嵌め込んでみる。
「出来た! まず第一弾だ! みんなに見てもらうか」
『とりあえず作ってみたぞー。意見くれると助かる』
メッセージをグループに投げてみる。
『ちょっと声に抑揚があった方がいいかもしれませんね。感情をわかりやすくした方がいいと思います』
『そうだねー、高木ちゃんが淡々としちゃっているかもね。悪くはないと思うけど』
そんな指摘を受けながら、高木に修正方針を指示し、録音データ更新版で動画を再度編集する。
『とりあえずこれから毎日2本投稿する予定だからよろしく! 投稿前日にはデータを送るから何かしらコメントをくれると助かる!』
そこから先は完全な繰り返し作業だ。動画を作成し、コメントをもらい、修正して投稿する。時間もお昼休みと夜20時で固定して予約投稿を活用しながら投稿し続ける。コメント欄やいいね数、再生回数などは何も気にせず機械的に投稿し続けた。
「10万再生超えている動画も出ているが、チャンネル登録者は数百人増えた程度だな。ただ登録者は1万人を超えた! いい調子だ」
「そうね。でもまあ、これからじゃない? あれはどうなの、維持率だっけ?」
一週間後、合計14本の投稿を終えたタイミングで、全員でカラオケ店に集合し、ショート動画についての意見共有会を行う。
「ああ、視聴者維持率か。高木、どうなっているかわかるか?」
「えーっと、60%だね。結構いいんじゃないかな」
「おお! それは良い数値だな。コメント欄もパッとみた感じ、荒れてはいないし、引き続き投稿していけば良さそうだな」
「良いんじゃないでしょうか。まだ十数本ですよね? 効果を判断するにはまだ早いかと思います」
「まあそれもそうだ。高木には引き続き負荷がかかるが、よろしく頼む」
「私はちょっと読むだけだから問題ないよ。むしろ上月くんは大丈夫? 編集大変かもしれないけど」
「ああ、大丈夫だ! それほど複雑な工程はないしな。そして何より楽しい! 自分の作った作品が世の中に出ていくのは良いもんだな」
「お、上くんもこっち側の感情が芽生えてきたんだね」
「ようこそクリエイターの世界へ! まあハマりだすと止まらないので程々にしてくださいね」
「まあ今のところショート動画以上のことをやるつもりはないしな。それ以降の領域は下井草の担当だよ。そういえば3作目の歌ってみた動画は順調か?」
今回の作品に関して、俺は関わらず3人での作成をお願いしていた。忙しいと言うのもあるが、完全女子目線での作品というのも感性が変わって面白いかなと考えたからである。
「うん、結構議論になったけどとりあえずまとまったから動き始めてるよ。楽しみにしててね〜」
「3人とも微妙に趣味が違うので中々まとまらなかったんですが、ベストな案を出せたと思います! 今から視聴者の反応が楽しみです」
「まあ私はだいぶ練習しないといけないから大変だけどね。難しい曲になっちゃったから」
どんな曲になったんだろう。楽しみだな。まあその楽しみは動画公開前まで取っておこう。
「出来たら見せてくれよ。基本的には問題ないと思っているが、最終チェックだと思ってくれ」
「は〜い」
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