第27話 クズ&ポンコツ*聖*

*聖*


「琴葉、様子はどうなの」


 物陰から四月一日家を見守る彼女の背後にスッと立ってみた。


「わっ!」


「あら、驚かせてしまったわね」


 静かにしないと、隠れている意味がないわよ。


「毎回毎回心臓に悪いです……」


 仕方がないじゃない。


 楽しいのよ、瞬間移動。


「で、どうなの」


「簡潔に報告します。村人たちが境内の箱を発見。中身を見た親たちが発狂してました。面白かったです」


 簡潔、と言いながら感想をしっかり挟んでるじゃない。


「村長の息子3人と村長が亡くなったので、残った長男が村人に指示を出しています」


「そうなるわよね」


 この村にいる時点で頭がおかしいのは確定なのだけれど、彼はまだまともな――


「クズ長男は山に行った者たちを待っていましたが、どうやら諦めたようです。その代わりに、村人たちを四月一日家に向かわせました。聖様のお知り合いの悪霊によると『母親を捕らえろ』と命令したそうです」


 前言撤回。


 クズだったわ。


 一ミリもまともじゃなかったわ。


「成程。幸恵さちえさんは、まだ帰ってきていないのよね?」


「はい、まだです」


 良かった。


「ポンコツ次男がなかなか現れなかったから、間に合わなかったんじゃないかとひやひやしたわ」


「あっ、だから遅かったんですね」


「そうよ」


 視線は四月一日家に向けたまま、私たちは話し続ける。


「死にました? ポンコツ」


「死んだわ」


「上手くいってよかったです。優ちゃんは?」


「今は屋敷に音葉といるわ」


 子ども二人で心配じゃないかって?


 大丈夫よ。


 セキュリティは万全だし、周囲をお友だちの霊たちが守ってくれているもの。


「じゃあそっちは大丈夫ですね。小鳥さんは?」


「狩りをしながらこっちに向かっているはずよ」


 多分。


 狩りを楽しみすぎていたら、来るのは当分先になるわ。


「あっ」


 琴葉が指を差しながら声を上げた。


「止めに行きましょうか」


「はい」


 村の尋常じゃない様子を目にした幸恵さんは、慌てた様子で家へ向かっている。


 早く保護しないと。


 これ以上、クソ村人たちに好き勝手させるもんですか。


**

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