開幕
神様なんていない
畑か田んぼかようわからん。
自然しかない風景が流れてく。
横に座っとるママは、
「眠かったら寝ていいからね」
って言ってくれたけど、眠ないから起きとる。
これからどんな生活が待っとるんやろか。
バスに揺られながら想像する。
おばあちゃん家に行くのは久しぶりや。
ずっとお父さんが「行くな」って言っとったから。
ママを外出させるのが嫌やったっぽい。
知らんけど。
転校前は毎日学校でイジメられとった。
なんもしとらんのに。
理由がわかったら謝れるのに。
家ではお父さんがママを殴って、暴言を吐いて。
ママのこと愛しとるんか愛してないんかよーわからんかった。
ただ一つ確かなのは、お父さんの連れ子の姉二人は愛されとった。
勉強も運動もできる二人と比較される私。
「お前は顔だけはいい」
「将来はカラダを売るしかできひん無能」
あーママだけやなかったわ。
私もなかなかに酷いこと言われとった。
忘れようと努力しても忘れられへん。
学校にも家にも居場所なんてなかったけど、ママだけが私を愛してくれた。
守ろうとしてくれた。
離婚できひんかったんは、お父さんが社長で、ママは専業主婦やったから。
パートで働こうとしたら殴ってとめられとったし。
それがな、この間会社が倒産したねん。
社員さんにお金を持ち逃げされたんと、事業失敗が重なったんやって。
自業自得や。
ママは、
「今しかない。すぐに荷物をまとめて」
お父さんも姉も家におらん間に荷造りをして。
離婚届けと指輪をリビングに置いて、私たちは家を出た。
行く先は一つしかない。
昔ママが働いとった貯金はあんまり残ってへんから。
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