第22話 驚きの◯玉

 私とお子は猫アレルギーである。そんなところまで似なくていいのに、遺伝子というものは余計なものばかり伝えたがる(髪が抜けやすいとか)。

 実家で猫を飼っている。三兄弟だったが、今は(多分)長男のみ生き残っている。人間のようなどでかい便をし、人間のように毎朝「おはよう」と挨拶してくる可愛いやつだ。うんこはめちゃくちゃ臭いけど。

 そんな愛猫を目一杯愛でたいのに、それを許さぬ体。撫でたあとは必ず手を洗うが、なんだか愛猫をバイ菌扱いしているようでいやだ。

 飼い始めたのは私が社会人になったばかりの時で、当時は自分が猫アレルギーだなんて思いもしなかった。子猫たちと戯れても特に症状もなく、猫吸いもできていた。今やったら一撃で仕留められる。

 憶測だが、出産して体質が変わったのだと思われる。そうして生まれたお子も、もれなく猫アレルギーという難儀な体質になってしまった。しかも私よりも酷くて、実家に帰省中は目薬必須だ。お子も猫大好きなのに、触ったあとは手を洗ってね、と言うのが心苦しい。

 最近、義実家にて、飼い猫が出産した。母猫は外飼いだったので、義実家ではアレルギー反応が出る心配はなかったのだが、生まれた子は子猫のうちは中で飼うことにしたようだ。

 久々の子猫に浮かれる俺。威嚇されようとも必死にネズミのおもちゃで仕掛ける。おしりをふりふりさせて飛びついてくると歓声を上げてしまい、また逃げられる。お子のくしゃみと構いたがりの歓声が交互にハーモニーを奏で、なかなか賑やかだった。

 子猫の名前はルル(仮)。義母は「ルルちゃーん、ルルちゃーん」と愛おしそうに彼女の名を呼んでいた。母猫に似た黒と白の模様が可愛いと目を細めていた。

 そんな義母から、ある日LINEが届いた。

「ルルに◯玉がある」

 ……。

 義母は肝っ玉母ちゃん風だが、下ネタを好む人ではない。画面から義母の困惑がひしひしと感じられる。きっと、いつもの義母だったら「ルルちゃんはルルくんでした」とか「ルルは男の子でした」とか、そんな言い回しをするだろうが……まさかの◯玉。驚きの◯玉。私はこのときはじめて、本当に膝から崩れ落ちた。抱腹絶倒とはこのことだ。私はまだ◯玉で爆笑できる子供心溢れる大人だったらしい。

 ひいひいと腹を抱える私を見下ろすお子。君はこんな大人にはなってはいけないよ、と内心で声がけする。だって今笑う以外のことできないもん。

 その後義実家に行くと、義母は「ルル〜」と子猫を呼んでいた。ちゃん付けするのはやめたようだが、愛おしそうに彼の名を呼んでいた。

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