さもありなん

三家ヲ臀

第1話  さもありなんの魅力


 この世には魅力的な言葉がたくさんある。汚い言葉もたくさんあるけれど、魅力的な言葉たちはそれらを相殺してしまうくらいの言葉力があると私は思う。 

 中でも「さもありなん」という言葉が好きだ。だからタイトルにしてしまったわけだけれど。どこをとってもやわらかくしか言いようのない感じとか、言葉尻が「ん」なところとか、すごく好き。

 しかし今の私には到底使いこなせない。高嶺の花のようなものなので、文章を書くときに使ったことはない。だからこそ、読書中に「さもありなん」に唐突に出くわすと嬉しくなる。ニィッと右の口角が上がり、多分すごく気持ち悪いと思う。「さもありなん」を巧みに使う方々は私を気持ち悪い顔にしてしまう魔法使いかもしれない。末恐ろしい魔法だ。

 さて、「さもありなん」とは、

「当然のことだ」

「そうであろう」

「もっともなことだ」

 というような意味があるようだ。そう言ってしまった方が早いし解りやすいのだろうけど、ちょっと高圧的というか、偉そうな感じがなんだかな、と思ってしまう。例えば上司になにかお伺いを立てたとしよう。すると上司は、「当然だろ!」と語気を荒げたり、「そうであろう」と腕組みをしてご自慢の髭を撫でながら頷いたりする。私はどちらも耐えられない。

 しかし「さもありなん」と言われたらどうだろう。言葉の意味を知らない場合は「はえ?」となってしまうとは思うが、「はえ?」とは思っても嫌な気分にはならないような気がする。きっと一つの意味に対して色々な言い方がある中で、「さもありなん」を選んでくれる上司はいい人に違いない、と思う。


 ここまで冷静に述べてきましたが、本当のところのテンションは、

「さもありなん」

 ……なんてかわいらしい!うちわにしたい!

【さもありなん(ハート)】

【バーンして(ハート)】


 ……といった具合に、私は「さもありなん」に首ったけだ。

 いつか使ってみたいものだなぁと夢見ている。


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